体重減少と受診のタイミング
とくにダイエットなどはしていないのに、周囲の人に「痩せた?」と声をかけられたり、「やつれたかな?」と実感した経験はないでしょうか。
短期間での意図しない体重減少は、重大な病気が隠れている可能性も考えられます。
体重減少の原因を理解し、気になる症状が併発している場合は、医療機関への受診を検討してください。
体重減少とは
医学的な見解としては、6ヶ月〜12ヶ月の間で意図せずに4.5㎏以上(もしくは5%以上)の体重減少がみられた場合を指します。
例:60㎏の方が6ヶ月〜12ヶ月の間で3㎏以上の体重減少がみられた。
体重減少の原因
私たちの体は生きていく上で、生命を存続させるためにエネルギーを吸収しています。
そのエネルギーが消費されつづけることで、寝ている間でも臓器などの器官は絶えず機能できるのです。
この身体に入るエネルギーを「プラス」、消費されるエネルギーを「マイナス」とした場合、双方のバランスが概ね一定にコントロールされている状態であれば、大幅な体重増減はありません。
それは、身体(脳)に備わっている
- 摂食中枢
- 満腹中枢
という機能が、自動でコントロールしてくれているからです。
多少、エネルギーの摂取量が変化しても、代謝を落とすなど調整してしばらくは体重も維持されます。
よって、体重減少が起こっている場合は、
- 摂取するプラスのエネルギーが減っている。
- 消費されるマイナスのエネルギー増えている。
- または両方
という状態であることがわかります。
体重減少の要因となる代表的疾患
摂取エネルギーが低下する疾患
うつ病
うつ病は何事にも無気力になってしまう傾向があり、生きていくために必要な食事や睡眠などの行為が疎かになってしまうことがあります。
食事が億劫になってしまったり、夜なかなか寝つけなかったり、悪習慣がつづき心身ともに支障をきたしてしまいます。
心当たりのある方は、一度、精神科や心療内科にご相談ください。
摂食障害
摂食障害の1つである拒食症は、食事をほとんどとらなくなってしまう「こころ」の病気(精神疾患)です。若い女性に多いイメージをもっていますが、男性でもご高齢の方でもありえる病気です。
摂食障害は体調を崩しやすくなります。
日常生活に支障をきたす前に、早めに医療機関を受診しましょう。
消化吸収障害
しっかりと食事をしていても、それが必ずエネルギーとして蓄えられるとは限りません。
食事を摂ることで体内に入ったあと、各消化器官が働くことで体内に栄養が吸収されていきます。
しかし、消化器官が機能障害を起こしてしまうことで、「食べ物を受けつけない」「食べても消化吸収されない」という状況にいたります。
中には癌などの病気が進行するなかで、消化吸収障害を起こしている場合も考えられますので、いずれにせよ早めの診断が必要となりです。
内分泌疾患
内分泌疾患とは、ホルモンの分泌異常によっておこる病気です。
たとえば、糖尿病です。糖尿病はインスリンというホルモンの分泌が低下してしまうことで起こります。
肥満の方(体重が多すぎる方)が患うイメージも多いですが、糖尿病を患うことで体重減少が起こるケースも少なくありません。
これは食事によって摂取したブドウ糖をエネルギーとして活用できなくなってしまうことが原因です。代わりに体内に蓄えられている脂肪・筋肉などのタンパク質が消費されてしまい、体重減少を招きます。
摂取エネルギーが増加する疾患
悪性腫瘍(がん)
胃がん、食道癌、など消化器癌に限りません。癌細胞はその種類にもよりますが、普通の細胞より活発に生命活動を行い増殖するため代謝が増大します。したがって癌が体内にあることで消費エネルギーが増え、体重減少を来してしまうことがあるのです。
発熱
意識されている方はほとんどいないと思いますが、体温調節はとてもエネルギーを消費する作業です。
そのエネルギーを基礎代謝といいます。
体温維持の他にも、絶えず動き続ける心臓や、寝ている間も機能する呼吸など、私たちが生きていくためには欠かせない機能を維持するためのエネルギーです。
自己免疫疾患(自分の組織を自ら攻撃してしまう病気)や感染症が起こった時、人間の体は発熱を起こして、その増殖を抑制しようと働きかけます。
体温を病原体の増殖至適温度域よりも高くすることで、増殖を抑えられるのです。
たとえ安静にして身体を動かしていなくとも、消費エネルギーが増え、体重減少の要因となります。
甲状腺疾患
甲状腺疾患は若い女性に多い病気です。
甲状腺は「のどぼとけ」のすぐ下にある臓器で、甲状腺ホルモンを作る働きがあります。
「甲状腺機能亢進症」は甲状腺ホルモンが必要以上に分泌されてしまう病気です。
甲状腺ホルモンは細胞の新陳代謝を盛んにする役割があり、過剰分泌されると体温上昇や動悸(脈拍が上がり心臓の拍動が自覚される症状)が起こります。
「甲状腺機能低下症」という病気の治療として、甲状腺ホルモンを補充する薬剤を使用することがあります。
その作用によって薬剤性の甲状腺ホルモン過多状態を起こすこともあります。