胃痛とは
胃痛みの多くは「胃酸の過剰分泌」とされています。
なんらかの要因によって胃酸が出すぎてしまい胃粘膜を傷つけることで生じる痛みです。
また胃痛は単に胃に痛みを感じるというだけではなく、
- お腹が張った感じがする
- 吐き気がする
- 胸やけがする
など
さまざまな症状が併発して起こることもあります。
胃酸・胃粘膜について
胃は私たちが食べた物を消化する役割が備わっています。その消化機能を担っているのが胃液です。
胃液の中に含まれる塩酸は胃酸とよばれ、強い酸性の性質をもっています。
胃は私たちが食べた物を消化する役割が備わっています。その消化機能を担っているのが胃液です。
胃液の中に含まれる塩酸は胃酸とよばれ、強い酸性の性質をもっています。
胃痛をはじめ、胃の疾患としてあげられる胃炎や胃潰瘍は、胃粘膜の損傷が原因で起こる症状です。
このほか、魚介類に寄生する寄生虫(アニサキス)が、食事を通して体内に入り、胃粘膜に食いついてもぐろうとすることで胃痛の症状がでる場合も少なくありません。
女性の場合、生理前の身体症状として、頭痛・腰痛・乳房痛・胃痛・にきびなどに悩まされることがあります。これらの症状は女性ホルモンバランスが起因しており、胃痛については胃壁が収縮することで発症する症状です。
胃痛による苦痛を軽減するために、さまざまな胃薬の市販があります。
市販薬は手軽に購入できるというメリットはありますが、原因がわからないまま服用すると逆に悪影響をおよぼすリスクが伴いますので注意が必要です。
胃痛の症状
症状によっては、食後に痛みを感じるケースと、空腹時や夜間に痛みがではじめるケースがあります。
胃痛は緊急性がさほど高くない症状から、すぐに診察が必要な症状ものまでさまざまです。
緊急性の高い胃痛の場合は、なるべく早めに消化器内科を受診する必要があります。
痛みのタイプもいくつかに分かれます。
- 鈍痛、鋭い痛み
- 脈を打つようなズキズキとした痛み
- 胸を強く締めつけられるような痛み
日々悩まされている胃痛がどのような種類なのか、一度、確認してみましょう。
緊急性がそれほど高くない胃痛
- 症状がすぐに治る胃痛
- 痛みが一時的で繰り返し起こらない胃痛
一度、病院で診察した方がのぞましい胃痛
- 長時間継続して起こる胃痛
- 胃もたれの症状を伴い胃痛
- 胸やけの症状が伴う胃痛
- 痛みが治ったり再発したりを繰り返す胃痛
- 発熱を伴い、下痢・便秘の症状もある胃痛
緊急性が高くすぐに受診が必要な胃痛
- 我慢できないほど強い胃痛
- 痛みだけでなく冷や汗をかくほどの胃痛
- 吐血や嘔吐の症状が伴う胃痛
- 痛みのある部位を押して、離したときに痛みが増加する胃痛
- 身体を動かすと痛みが響く胃痛
胃痛の原因
1:食生活
日頃、身体に負担がかかるような食事をされていないでしょうか?
脂っこいものや消化に悪い食べものを消化する際は、胃酸の分泌が高くなります。
暴飲暴食を繰り返すと、胃酸によって胃の粘膜が傷つきやすくなり、胃痛が起こります。
また、刺トウガラシなどの香辛料やアルコール等も胃に負担をかけますので、摂りすぎに注意してください。
2:ストレス
ストレスは胃腸の働きにも影響を与えます。
内臓や血管などの働きを調整する「自律神経」は、過度なストレスによって乱れやすい性質を持っています。
結果、胃の働きに支障をきたし、胃酸の過剰分泌が生じることで胃の粘膜を傷つけ、胃痛の症状が起こります。
3:ピロリ菌
本来、胃の中は強い酸状態にあり、細菌は生息できない環境にあります。
しかし、ピロリ菌は自分の周囲をアルカリ性に変化させることができるため、胃の中でも生息できるのです。
胃の中で活動するピロリ菌によって粘膜や胃壁が傷つけられてしまい、胃痛が起こります。
胃痛を伴う消化器疾患
急性胃炎
胃に急激な痛みがでる急性胃炎は、みぞおち辺りにキリキリとした痛みを感じます。
胃痛だけでなく、胃の膨満感や不快感、胸焼けや吐き気の症状を伴うことも少なくありません。
主に、細菌やウイルス感染によって発症する胃炎が多いです。
また生活環境の乱れ(暴飲暴食やストレス)によって自律神経バランスが崩れ、胃の機能が低下することで生じることもあります。
慢性胃炎
慢性胃炎は、長きにわたって胃痛・胃のむかつき・吐き気・胸やけ等の症状を繰り返す疾患です。
胃の粘膜の損傷と修復を長期的に繰り返すため、胃への負担が大きくなっていまい、胃粘膜は萎縮していきます。修復機能が追いつかなくなった際に起こるのが慢性胃炎です。
慢性胃炎の主な原因は、ピロリ菌感染があげられます。
その他、生活環境の乱れ(偏った食生活、ストレス、過度な飲酒・喫煙)でも起こりえます。
逆流性食道炎(GERD)
逆流性食道炎とは、胃の内容物が食道に逆流し、それが繰り返されることで生じる炎症です。
胃酸や胆汁を含んだ内容物が逆流してくることで、食道の粘膜を傷つけられ、ただれた状態になります。
逆流性食道炎の主な症状としては、
- 胃痛や胸やけ
- ゲップとともに酸っぱいものが上がってくる
- 咳
- 喉の違和感(喉がつかえる・イガイガする)
があげられます。
胃潰瘍
胃潰瘍は、繰り返す胃炎によって胃粘膜表面に欠損が起こり、胃壁が損傷してしまった病態です。
粘膜表面の欠損が軽度の状態では「びらん(ただれ)」とよばれ、欠損の傷が深くなると「潰瘍」となります。
胃潰瘍を患うと、みぞおち辺りの鈍い痛みを感じます。
その他の症状としては、胸焼け、黒色嘔吐や吐血、黒い便などが特徴的です。
十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍は、十二指腸に炎症が慢性的に発症することで、深い傷ができてしまっている病態です。
ピロリ菌感染をはじめ、抗炎症作用や鎮痛・解熱作用のある薬剤を服用することによって炎症が起こります。
十二指腸潰瘍の主な症状としては、
- 腹痛
- 黒い便(消化管の出血によるタール便)
- 食欲不振
- ゲップや胸やけ
などの症状がみられます。
機能性ディスペプシア
胃に痛みや胃もたれ、吐き気を感じ、診察を受けたが消化管への異常がみられない場合もあります。
この病気を、機能性ディスペプシアといいます。
胃の炎症は必ずしも症状と関連するとは限りません。
逆になんらかの症状が出ていても、内視鏡検査やCT、血液検査などでも炎症などの病変がみられないケースもあります。
胃痛の検査方法
胃や腹部になんらかの不快症状がある方は、早めに当院へご相談ください。
まずは早期に診断をし、症状の原因を調べる必要があります。
不快症状の原因や疾患の有無は、下記の検査で調べることができます。
超音波検査(腹部エコー検査)
高い周波数の音波である超音波は、物体に当たると反射する特徴があります。
この反射波を利用し、超音波を当てることで、臓器の病変を調べます。
超音波は肝臓や膵臓、胆のうの状態を調べるのに有効です。
血液検査
炎症の程度を評価するとともに、疑わしい原因臓器の数値異常を調べます。
胃内視鏡検査(胃カメラ)
内視鏡検査は先端に高性能のカメラが付いた内視鏡(電子スコープ)を使って体内を観察する検査です。
胃内視鏡検査(胃カメラ)は「上部消化管内視鏡検査」ともいわれ、食道・胃・十二指腸の上部消化管を検査します。
ピロリ菌感染の有無や、胃内の炎症・潰瘍、がんなどの確定診断も可能です。
治療方法
まずは下記のような対症療法を行います。
薬物療法
患者様の症状に合わせて、
- 消化管運動機能促進薬
- 胃酸分泌抑制薬
- 胃酸中和薬
などのお薬を処方いたします。
ピロリ菌の除菌
ピロリ菌感染によって胃痛や機能性ディスペプシアの症状が出ている可能性も考えられます。
ピロリ菌を除菌することで、症状改善が期待できます。
※ 機能性ディスペプシアの治療としてピロリ菌除菌をする場合、保険適用外となります。
その他、原因療法として生活習慣の改善を検討します。
生活習慣の改善
乱れた食生活の見直しが大切です。
脂っこい食事や消化の悪い食べ物の摂りすぎは胃に大きな負担をかけます。
また、過度に辛いものや甘いものも同様です。
コーヒーや紅茶・抹茶なども摂りすぎには注意しましょう。
以上のように、食生活の見直しを図るとともに、アルコール摂取や喫煙等も制限しながら、症状の改善を図ります。
胃痛を放置すると
胃痛を放置することはとてもリスクが高いです。
胃痛や腹痛の診断をした際に、胃癌が発見されるケースも少なくありません。
胃癌をはじめとする消化器疾患は、早期発見によって治療できるものが多いです。
胃痛は緊急性がさほど高くない症状から、早期に診察すべき症状ものまでさまざまです。
胃に強い痛みや不快感がある方は、症状を軽視せず、一度、当院へご相談ください。