便秘薬の使い分けについて医師が解説
- heiwamed0002team
- 2021年6月14日
- 読了時間: 5分
更新日:3月26日
毎朝の快便から始まる一日、理想ですね。 こどもの頃は当たり前のように出ていた便、あるときから便秘になったり、便がでても残便感があるなど便にかかわる悩みがでてきます。
ストレス、食事、生活リズムの変化などが便通に大きく影響します。
日本人の7人に1人が抱えている悩みが便秘です。
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ちょっとした排便習慣の改善の積み重ね効果あります。 でも、便が出ないときには薬の力をかりる必要がありますね。
便秘薬をざっくりと2つに分類
便秘の治療薬には、プルゼニド、ヨーデル、ラキソベロン、マグミット、リンゼス、グーフィスなどさまざまながあります。
作用機序毎に細かく分類されています。

大腸刺激性下剤、浸透圧性下剤、直腸刺激性下剤、粘膜上皮機能変容薬なんだか漢字ばかりが並んでいて、分かりづらいですね。
理解しやすくするために、大胆に2つに分けちゃいます。
腸を刺激して出す薬(大腸刺激性下剤)
その他
こんな単純でいいのかと思われるかもしれません。 もちろん医師は細かい分類作用機序、薬の特性を理解して患者さんの症状に応じて処方していますのでご安心ください。
大腸刺激性下剤(腸を刺激して出す薬)
古くからつかわれてきた薬に腸を刺激して出す便秘薬があります。 プルゼニド、アローゼン、ヨーデル、ラキソベロンなどです。 これらの薬は大腸刺激性下剤に分類され、文字通り「大腸」を「刺激」して便を出します。
大腸刺激性下剤の特徴:腸を刺激するので速効性がある
寝る前に1錠飲むと、翌朝には便がスッキリでる。 効果が分かりやすいのが特徴です。 時には、すこしお腹が痛くなったり渋りながらも便がでると、あとスッキリします。
こういった便秘薬は速効性があるので便秘薬としてよく使われます。 市販のスルーラック、コーラックなどもこの類いの薬です。「飲んですぐ効く、便がちゃんとでる」というのが特徴です。
理想の便秘薬に思えますが、刺激性下剤には大きな課題が1つあります。
大腸刺激性下剤の留意点
それは「慣れ」です。
大腸粘膜を下剤が刺激して動いていたのが、飲んでいるうちに刺激に慣れてきます。1錠で効いていたのが、2錠、3錠飲まないとだんだんと同じ効果がえられなくなってきます。毎日お酒を飲むと、だんだん体がお酒に強くなり同じ量では酔えなくなり、お酒の量が増える。 こんな下剤をアルコールに例えるとこんな感じです。
生活習慣の改善などで、出来るだけ刺激性便秘薬に頼らずに便秘を改善するのが理想です。刺激性便秘薬は速効性があり非常に有効な治療なので使わないというわけでなく、量を増やさず、使うとしても頓用(必要時)の形をめざします。
その他の便秘薬
大腸刺激性下剤以外の便秘薬である浸透圧性下剤、直腸刺激性下剤、粘膜上皮機能変容薬などをひとくくりで「その他の便秘薬」としています。「大腸刺激性下剤」が比較的速効性があり、その反面「慣れ」からだんんだん効きが悪くなる傾向があります。それに対して「その他の便秘薬」は効果は比較的ゆっくり、そのかわりだんだん効きがわるくなることは少ない特徴があります。
その他の便秘薬で多く使われているのは「浸透圧性下剤」で酸化マグネシウムやカマグに代表される下剤です。便の中に水分を引き込んで便を軟らかくして出やすくします。
その他の便秘薬の特徴
腸を直接刺激する下剤に比べ効果は穏やかなので、お腹が痛くならないのが特徴です。その他、モビコール、モニラック、ラグノスNF経口ゼリーなども「浸透圧性下剤」です。胆汁酸再吸収抑制薬であるグーフィス、や粘膜上皮機能変容薬であるアミティーザ、リンゼスなども穏やかで、スムーズな便通効果があります。
グーフィス(胆汁酸トランスポーター阻害薬)新しい作用機序の便秘薬がもうすぐ処方できるようになります。※2018年4月から処方できるようになりました。
番外編:便秘に効く漢方薬
古くから漢方薬も便秘の治療に用いられています。大黄甘草湯、潤腸湯、麻子仁丸等などが便秘に有効です。 防風通聖散、大建中湯は腸の蠕動をよくする働きがあり便秘薬としても効果的です。 大黄甘草湯と麻子仁丸は腸管を刺激する作用をもつ大黄を多く含んでいます。
副反応が少ないと思われがちな漢方薬ですが、大黄甘草湯、防風通聖散、潤腸湯はグリチルリチン(甘草)が含まれているので、低カリウム血症の副反応に留意してください。時々採血でナトリウムとカリウム値をチェックしましょう。
便秘の方は大腸カメラで大腸を一度チェックしましょう
国民の7人に1人が悩んでいる便秘。朝便がスッキリでると、快適な一日のスタートなります。
食事や生活習慣の改善による便秘の緩和からはじめて、どうしても頑固な便秘には薬の力をかりての治療となります。その前に1点、大腸にがんや甲状腺機能低下などの病気がかくれていないことを確認しましょう。
ホルモン異常からも便秘になることがあります。 甲状腺ホルモンが低下すると何となく体がだるく、便秘になります。 甲状腺ホルモンは血液検査でチェックすることができます。
大腸がんで腸が細くなり便が通過できなくなることからの便秘は根本的な治療が必要となります。便秘なので薬と安易にのまずに、まず大腸の病気が隠れていないかの確認です。
血液検査で大腸がんが判定できるとよいのですが、残念ながら採血ではわかりません。大腸カメラで、大腸の中を直接見るのが最も正確な検査です。
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今まで便通がよかったのに、最近急に便秘になった最近便が細くなった
など便の性状に変化があるときは安易に下剤にたよらず、まず原因を大腸カメラや血液検査で確認しましょう。
便秘薬で大切なこと
下剤には、大腸刺激性下剤、浸透圧性下剤、直腸刺激性下剤、粘膜上皮機能変容薬など多くの種類の薬があります。大腸刺激性下剤は速効性があるためによく使われる下剤ですが、長く使い続けると体が慣れてきて薬の量が増える傾向にあります。 大腸刺激性下剤は常用せず、必要時頓服で使う程度が理想です。
いままで便通がよかったのに急になった便秘、便が細くなった、などの時は大腸がんやホルモン異常など病気が隠れていないか血液検査、大腸カメラなどによるチェックも大切です。