甲状腺機能亢進症とは
甲状腺機能亢進症は、首の付け根にある甲状腺から出る甲状腺ホルモンが出すぎることで、体の代謝が活発になりすぎて体調不良をおこす病気です。
寒い冬に自分だけ異常に汗をかく、動悸がする、急に体重が減るなどの症状がおきます。
男女比1:4で女性に多く、20~40歳前後で発症することが多い病気です。
甲状腺機能亢進症の原因で多いのがバセドウ病です。
バセドウ病は異常な抗体(抗TSHレセプター抗体)をつくる自己免疫疾患です。
抗TSHレセプター抗体が自分自身の甲状腺を刺激するため甲状腺ホルモンが過剰に分泌され甲状腺機能亢進症を引きおこします。
甲状腺機能亢進症の症状
甲状腺は首の付け根の左右にある4cmほどの小さな臓器です。
小さいながらも、体の恒常性(体温、体調)を保つのに重要な働きをする甲状腺ホルモンを分泌します。
甲状腺ホルモンが出すぎると体の代謝が亢進して、動悸、息切れ、疲労感、汗をよくかくようになる、体重減少、不眠、イライラ感、手がふるえるなど、全身のさまざまな症状がでてきます。
元気で食欲旺盛なのに急に体重が減る、周りの人は寒がっているのに自分だけ暑くて異常に汗をかく、健康診断で脈が速いと指摘されたなどで、甲状腺機能亢進症が見つかることがしばしばあります。
甲状腺機能亢進症の検査
甲状腺の検査は採血とエコー(超音波)検査が中心となります。
甲状腺機能は血液検査で測定することができます。
甲状腺ホルモン(FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定することで診断ができます。
甲状腺機能亢進症の原因として多いバセドウ病では甲状腺ホルモン(FT4)が高値、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低値示します。
甲状腺機能亢進症の原因としてバセドウ病、橋本病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎などがあります。
バセドウ病であることを確認するためには抗TSHレセプター抗体(TRAb)、橋本病であることを確認するためには抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)を測定します。
甲状腺の状態をエコー検査(超音波検査)で調べることができます。
エコー検査は超音波を出す探触子(プローブ)を首に当て行う検査で注射や薬を全くつかわない安全な検査です。エコー検査で甲状腺の大きさを測定、甲状腺内部の状態を描出します。
バセドウ病では甲状腺腫大(はれる)、甲状腺の内部が不均質となり、血流を調べるドップラー法で血流の増加が確認されます。
橋本病では甲状腺内部が不均質となりエコーレベルの低下(暗く写る)を認めます。
中島クリニックでは甲状腺エコー検査は予約で行っております。
血液検査は予約不要で、随時行っております。
血液検査、超音波検査の結果から甲状腺機能亢進症の原因を総合的に判断します。
甲状腺機能亢進症の治療
甲状腺機能亢進症の原因として一番多いバセドウ病について説明いたします。
薬で甲状腺ホルモンの合成をおさえる薬物療法、甲状腺を切除してホルモンをおさえる手術、甲状腺を破壊してホルモンを低下させるアイソトープ治療の3つがあります。
年齢、全身の状態によりどの治療方法を選択するか判断しますが、一般的にまず行うのは薬物療法です。
抗甲状腺薬にはチアマゾール(メルカゾール)、プロピルチオウラシル(チウラジール)の2種類があります。
体が甲状腺ホルモンをつくるのに必要な酵素を阻害して合成を抑えます。
抗甲状腺ホルモン薬を服用して2週間から1ヶ月ほどでホルモンが低下してきます。
甲状腺ホルモンが安定化するまで血液検査を頻回チェックします。
調べるのは甲状腺ホルモン(FT4、FT3)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)です。ホルモンの値が正常範囲に落ち着くように薬の量を調節します。
治療を続けることでバセドウ病の原因である抗TSHレセプター抗体(TRAb)の値も次第に低下、抗体が消失します。
抗甲状腺薬で肝機能障害、皮疹などのアレルギー症状が出たり、薬で病状が安定しない場合に手術やアイソトープ治療を考慮します。
また妊娠の希望がある場合、病状から急速に甲状腺ホルモンを安定化させる必要があるときは薬での治療ではなく最初に手術を選択することもあります。
患者さんの年齢、病状、社会的背景から治療法を決めることとなります。
※手術が必要なケースは当院の連携している病院をご紹介させて頂きます。
甲状腺機能亢進症かもしれないと思ったら
甲状腺機能亢進症は、胃が痛い、胸が痛いなどのようなはっきりとした特定の症状がありません。
動悸、多汗、不眠、体重減少、倦怠感、イライラ感などの不定愁訴に近い全身の症状が甲状腺機能亢進症の症状です。
不定愁訴として見過ごさず当院に相談してください。
バセドウ病は自己判断で薬をやめない
バセドウ病は抗甲状腺薬でよくなる病気ですが、薬の中断で再発が多い病気でもあります。
薬の中止で約20%が再燃します。
自己判断での中断は禁物です。徐々に薬を減量していく必要があります。