「胸焼け」を自覚されたことがある方は多いと思います。文字通り「胸が熱く焼けるような感じ」「酸が胸にこみ上がってくる感じ」さらには「のどの詰まる感じ」この不快感はどこからくるのでしょうか。胸の熱くなる感じ、酸のこみ上げ感が続くと不快ですね。胸焼けの原因、日常生活での対処方法ついて解説します。
胸やけとは
胸焼けとは、文字通り胸が熱くやける感じの症状のことです。胃から食道にあがってきた酸が食道を刺激して出る症状が「胸焼けです」。胃酸は塩酸と同じぐらいのペーハー1から2ぐらいの強酸です。この強い酸が食道粘膜を刺激してさまざまな症状をつくります。
胃酸が食道にこみあがってくると、多くの方は「胸焼け」を感じますが、ひとによっては胸焼けを全く感じずに「胸の痛み」として感じることもあります。「胸の痛み」「胸の圧迫感」「背中の痛み」「げっぷ」など症状はさまざまです。
さらに胃酸が食道からのどまで上がってくると「のどのつまり感」「声がれ」「のどの違和感」などの、のどの症状を感じることもあります。
胃もたれや胃のむかつき、胸焼け、膨満感(お腹が張る)、げっぷ、胃の不快感など胃の不調は、多くの人が日常的に抱えている現代病の一つです。
胃の不調は、胃の不調だけではなく、モチベーションや集中力の低下や精神的に不安定になるなど、日常生活におけるパフォーマンス低下に大きく関わってきてしまうため、胃の不調で悩んでいる方は多いと思います。
胸焼けの原因
胸焼けの原因として
- 高脂肪、高カロリーの食生活の欧米化
- 肥満
- ストレス過多の現代社会
- ピロリ菌感染率の低下
が大きな要因です。
胸焼けの原因として、カロリーの高い脂っこい食事や肥満など生活習慣の変化が大きく関わっています。
昔は、日本人の食事は一汁三菜といわれるように、ご飯に畑でとれた野菜などが中心でした。食事の欧米化で高カロリー、高脂肪食となってきています。ハンバーガーやフライドポテトなどのファストフードの普及もその一つです。
脂っこいものをとると、消化するために胃から胃酸が多量に分泌されます。あっさりした食事に比べ脂っこい食事は胃の中に長く停溜しますので、より長い時間胃酸が分泌され続けます。脂っこい食事をとると胃酸過多の状態となります。キムチ、香辛料などの刺激物も胃酸を多くする一因となります。
高カロリー高脂肪の欧米化の食生活にともなう肥満も問題となってきています。体を動かす仕事よりもパソコンに向かう仕事が増えており運動不足が肥満を後押ししています。太ると横隔膜が上にもちあげられて、食道と胃のつなぎめがゆるくなります。つなぎ目がゆるくなることで胃酸が食道へあがりやすくなります。
胸やけを起こす病気
逆流性食道炎が胸焼けの原因です。
逆流性食道炎は文字通り、胃酸が食道へ「逆流」して「食道の炎症」をひきおこす病気です。塩酸のような強酸である胃液が食道に逆流してしまうと、胸焼けや胸の痛みなどさまざまな症状をひきおこします。
胃は胃酸であれないように厚い粘膜で覆われて保護されています。一方食道の粘膜は非常に薄く防御機能が強くありません。そのため酸にさらされると、容易にびらんと呼ばれるすり傷や潰瘍をつくってしまいます。これが逆流性食道炎です。
12の質問でわかる逆流性食道炎
胸焼けの原因として多いのが逆流性食道炎です。 逆流性食道炎の診断として胃カメラが一番正確ですが、自覚症状から逆流性食道炎が疑わしいかどうかをセルフチェックすることができます。 該当する項目があるか12項目チェックしてみてください。
- 胸やけがしますか?
- 苦い水(胃酸)が上がってくることがありますか?
- ゲップがよくでますか?
- 前かがみをすると胸やけがしますか?
- おなかがはることがありますか?
- 食事をした後に胃がもたれることがありますか?
- 思わず手のひらで胸をこすってしまうことがありますか?
- 食べたあと気持ちが悪くなることがありますか?
- 食後に胸やけがおこりますか?
- 喉(のど)の違和感(ヒリヒリ、声がれ)がありますか?
- 食事の途中で満腹になってしまいますか?
- ものを飲み込むと、つかえることがありますか?
胸焼けとストレス
脂っこいものを食べる、食べた後すぐに横になるなどの生活で「胸焼け」はひどくなりますが、ストレスも「胸焼け」を増悪させる要因の一つです。
ストレスがかかると胃が痛くなることを経験している方も多いのではないでしょうか。
ストレスは胃の動きを乱す大きな要因の一つです。 ストレスで胃の調子が悪くなる理由は交感神経と副交感神経のバランスが乱れるからです。 活動するときには交感神経が働き、リラックスした時には副交感神経が働きます。胃や内臓の動きは副交感神経で調節されています。 ストレスがかかると人間の体は交感神経優位の状態になります。
この時に副交感神経は抑えられた状態となり胃の活動(蠕動)も低下した状態となります。 ストレスで胃の蠕動が低下すると長い時間食べ物が停溜することになります。そのために胸焼けや呑酸などの逆流性食道炎が悪化するのです。
胸焼け治し方。日常生活での対処法
胸焼けの原因は胃酸が食道にこみ上げることです。
逆流性食道炎を悪化させる要因として、脂っこい食事、肥満、食べてすぐ寝る食生活、ストレスなどがあります。詳しく説明していきます
1)脂っこいもの控え、食事の中心を夜から昼に移す
ハンバーガーやフライドポテトなどのファストフードを避けましょう。野菜やタンパク質を中心とする食事は理想です。
とは言え外食中心の生活スタイルで食事内容を改善するのが難しいことも多いと思います。その場合は1日の食事の中心を夜から昼に移しましょう。食べてすぐに寝る生活は逆流性食道炎を増悪させます。お昼は満腹になるまで食べる代わりに、夜は意識して腹6分目ぐらいに減らすのも効果的です。
2)食後1時間は横にならない
お昼ご飯を食べてすぐに横になる生活は逆流性食道炎を悪化させます。ご飯を食べたあとは1時間は横にならずに、イスに座るかソファーなどにもたれてゆったりと過ごしましょう。
3)夜寝る時は左側を下にした姿勢(左側臥位)で寝るようにしましょう
立っている時は重力の影響で逆流はおきづらいですが、横になると重力の影響がなくなり食道への逆流がおきやすくなります。逆流性食道炎は夜中に増悪します。夜中に胃酸が上がる、起きたときに胸焼けが強くでるのはこのためです。
夜寝る姿勢を工夫することで逆流性食道炎を軽くすることができます。 起床時の胸焼けが強いかたは、左側を下にした姿勢(左側臥位)で寝るのも対策の一つです。 食道と胃の解剖的な位置関係から左側を下にした姿勢(左側臥位)の方が食道より胃が低い位置となり、逆流がおきづらくなります。
4)肥満の改善
週3回から4回ほどウオーキングのようなゆっくりとした運動を取り入れる、通勤を車から電車にかえるなどの生活スタイルを改善してみましょう。
5)腹部をしめつける服装をさける
腹部をしめつける服装も逆流性食道炎を悪化させる要因です。きつくベルトをしめるのを避ける、腹部を締め付ける服装をさけてワンピースなどにするのも方法です。 便秘でお腹がはることも、逆流性食道炎を悪化させます。市販の非刺激性の緩下剤を活用するのもよいでしょう。
思い当たる方は、今日からでも生活スタイルを改めてみてください。
受診のめやす
受診するタイミングは
「胸焼け」が続くとき
「食べ物が胸につまる」「食欲がない」「体重がへる」
などほかの症状があるときです。
受診するときには
いつから症状があるか
どのような時に症状がでるか(起床時、食前、食後など)
薬をのんだことがあれば(ガスター10やガストールなど)効いたかどうか
まとめ
「胸焼け」を自覚されたことがある方は多いと思います。一番多い原因としては逆流性食道炎です。
脂っこい食事、肥満、ストレス、ピロリ菌感染者の減少などが逆流性食道炎を引き起こす要因です。 夜遅い食事をやめる、寝る時の姿勢(左側を下にして寝る)、ストレス解消など生活習慣の改善が有効です。
受診するタイミングは「胸焼け」が続くとき、「食べ物が胸につまる」「食欲がない」「体重がへる」などの症状があるときです。
「いつから症状があるか」 「どのような時に症状がでるか(起床時、食前、食後など)」 「薬をのんだことがあれば(ガスター10やガストールなど)効いたかどうか」 など当院では詳しくお伺いを致します。