胃潰瘍とは
胃潰瘍の「潰瘍(かいよう)」とは、皮膚・粘膜・角膜などにできる組織の欠損です。
胃壁は本来粘膜によって保護されていますが、胃液に含まれる塩酸やペプシンという物質によって、深く傷つけられます。(消化性潰瘍とも呼ばれます。)
これまでは男性に多い病気とされてきましたが、更年期を迎えた女性にも多く見られるようになりました。
また、従来と比べると若い方の発症率も上がっています。
胃潰瘍の原因はさまざまです。
胃潰瘍の原因
1)ストレス
胃潰瘍はストレスによって誘発される場合があります。
几帳面・神経質な方、誰にも相談せずに一人で問題を抱え込みがちな方は、うまくストレスと付き合っていくことが大切です。
過労・睡眠不足などの肉体的ストレスも、胃潰瘍を誘発します。
とくに強いストレスは急性胃潰瘍を誘発するリスクが懸念されるため、注意が必要です。
2)ピロリ菌の感染
胃潰瘍を患う原因の7割以上がピロリ菌感染によるものです。
ピロリ菌が慢性胃炎を誘発し、症状を放置することで慢性胃潰瘍を患います。
ピロリ菌は抗生物質の服用によって除菌できますので、早めに受診しましょう。
1〜2週間ほどで直ります。
3)胃に負担をかける嗜好品
刺激の強い香辛料を好む方は、胃に大きな負担をかけています。またコーヒーなども、取りすぎには注意が必要です。
熱すぎる飲食物、冷たすぎる飲食物も同様です。
好きだからといって、食べすぎないように心がけましょう。
4)薬剤の長期使用
強い薬を長期にわたって服用されている方が、胃潰瘍を患うことがあります。
腰痛・膝痛・関節リウマチなどの痛み止め薬(非ステロイド系消炎鎮痛薬)は、胃腸の粘膜を荒らしてしまう副作用があります。どんな薬でも、必ずリスク(副作用)を伴います。
痛いからといって無闇に薬剤を使用することはやめ、必ず医師の指示にしたがって服用するように心がけましょう。
5)喫煙・飲酒
喫煙は胃粘膜の血行不良を招きます。
過度な飲酒も胃に大きな負担をかけますので控えめにしましょう。
6)不摂生・不規則な食生活
暴飲暴食や早食いは、胃の消化機能に負担をかけます。
就寝の3時間前には食事を済ませるように心がけましょう。
胃潰瘍の症状
1)みぞおち辺りの腹痛
患者様の主訴(自覚症状)のほとんどが腹痛です。
みぞおち(人間の腹の上方中央にある窪んだ部位)に痛みを感じ、この腹痛がきっかけでご来院されるケースが多いです。
とくに食事中から食後に痛むことが多く、満腹になるまで食べすぎると痛みが長く続く傾向にあります。
※ 空腹時に腹痛が起こる(食事をすると治まる)ケースは、十二指腸潰瘍を疑います。
腹痛の強さと胃潰瘍の状態はとくに関係ありません。
胃潰瘍を患っていても、腹痛の症状が出ない方もいらっしゃいます。
突然、激痛が走ったころには、潰瘍が悪化していることも少なくありません。
違和感を覚えたら、早期に受診することが大切です。
2)酸っぱいゲップ・胸やけ
胃潰瘍になると、胸やけ・酸っぱいゲップなどの症状が表れることもあります。
これは胃酸過多による「胸やけ」などの症状によるものです。
胃液が食道に逆流してしまうことによって、酸っぱいゲップがでることもあります。
胃潰瘍をはじめとする胃の病気は、口臭の症状がでることもあります。
3)吐き気・嘔吐
胃潰瘍を患うと、胃液が過剰分泌され、胃粘膜とのバランスを崩す傾向にあります。
その結果、酸っぱいゲップ・胸やけの症状や、嘔吐・吐き気の症状が表れます。
4)食欲不振、体重減少
胃になんらかの不具合が生じていると、吐き気や嘔吐の症状を誘発します。
結果的に食欲不振に陥り、体重が減少してしまう方もいらっしゃいます
5)吐血・下血
潰瘍のできた場所の血管が破れてしまうと、吐血や下血することがあります。
出血すると激痛が走ることもあり、冷や汗・動悸・血圧低下を伴います。
胃酸の影響を受けた吐血は、黒褐色の特徴的な色をしています。
下血のサインとして表れるのは、濁ったように黒ずんだタール便です。
吐血や下血は、気づくのがなかなか難しい症状でもあります。
とくに下血は、胃がんや大腸がんなどの重篤な病気である場合もありますので、大量に下血した際は、速やかに病院で検査してください。
6)背中の痛み
背中や腰周辺に痛みを感じ「単なる腰痛」と勘違いされる方が少なくありません。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、膵炎、膵臓がんなどが原因で背中の痛みがでることがあります。急な症状、長引く症状は、自己判断せずに医療機関を受診するようにしてください。
胃潰瘍の内視鏡画像
胃潰瘍の治療
胃潰瘍の初期段階では、薬物による対症療法が検討されます。
医師の診断後、正しい方法で薬を服用することが大切です。
胃潰瘍は2~3ヵ月間の治療で良くなることが多いです。
症状が治ったからといって自己判断で服薬を中断してはいけません。
症状が再発する恐れもありますので注意してください。
また、再発防止には生活習慣の見直しも有効です。
ストレス過多の生活を送られている方は、胃に負担をかけ、再発リスクを高めます。
ストレスと上手に付き合い、ため込まないように解消法を見つけることが大切です。
そして、疲れたなと感じたら適度に休息をとり、しっかりと睡眠をとるようにしてください。
食生活においても、胃の負担になるものは禁物です。
- 嗜好品(香辛料や甘いもの)
- 脂分の多いもの
- アルコール
は、量や頻度を調整しながら楽しみましょう。
タバコを吸う習慣のある方は、その本数にも注意してください。
一度、胃潰瘍を患った方は、禁煙をオススメします。
十二指腸潰瘍とは
十二指腸潰瘍は、胃と小腸を結ぶ十二指腸の粘膜が胃酸によって傷つけられて炎症を起こす病態です。
潰瘍がひどくなると、潰瘍から出血する「出血性十二指腸潰瘍」を患います。
激しい痛みだけでなく、吐血・下血の症状もではじめます。
さらには十二指腸に穴が空いてしまう「十二指腸潰瘍穿孔」という病気を患うことがあります。
十二指腸は潰瘍によって変形する特徴があります。
再発を繰り返してしまうと十二指腸は間がすぼまって狭くなり、食物の通過障害を起こすリスクを伴います。
十二指腸潰瘍の症状
みぞおちや上腹部の痛み
とくに空腹時や早期に痛むことが多いです。
背中の痛み
十二指腸は体の背側に位置しており、背中に痛みを感じるケースもあります。
吐き気や嘔吐
吐き気や嘔吐がない場合でも、不快感を覚えることが多いです。
タール便
潰瘍の一部に出血が見られる場合もあります。血液に含まれる鉄分の影響を受けて、濁った真っ黒の便になります。
十二指腸潰瘍の内視鏡画像
十二指腸潰瘍の原因
胃酸が分泌されても、この粘膜に防御されていることで胃壁や粘膜が傷つかないようになっています。
胃や十二指腸は、防御機能を備えた粘液によって胃酸から守られています。
しかし、ピロリ菌等の薬剤によって防御機能が正常に機能しなくなることがあります。
胃酸にさらされてしまうことで、粘膜が傷つき、粘膜の表面がただれて炎症を起こします。 それが十二指腸潰瘍の原因です。
十二指腸潰瘍の治療
潰瘍は、薬物療法によって治していきます。
胃酸を抑える制酸薬や粘膜を保護する薬が有用です。
潰瘍の原因がピロリ菌感染によるものであれば、ピロリ菌を除菌することで再発を防げます。
他の病気等で痛み止め薬を服用している場合は、薬の種類を変えることも検討されます。
また、制酸薬や粘膜保護剤を併用するも効果的です。