食道がんとは
食道は、のどと胃の間にある、長さ25cm程の筒状の臓器です。
主に食べものを胃に送り込む働きをしています。
食道の表面は粘膜で覆われていますが、この粘膜に発生する腫瘍を「食道がん」といいます。
食道がんの症状
食道がんの初期は、必ず自覚症状が出るとは限りません。自覚症状がない方も多いです。
一般的には「食べものが胸につっかえるような感じ」であったり、「熱いものを飲んだときに食道にしみるような痛み」を感じたりします。その他に体重が減ったり、背中の痛みを感じたりすることもあります。自覚症状がなくても、会社の検診や人間ドックなどで早期の食道がんが偶然発見されることもあります。
食道がんによる死亡は、人口10万人あたり約9人です。肺がん、胃がん、大腸などと比べると、比較的頻度の低いがんといえます。しかし、喫煙と飲酒が食道がんのリスクであり、お酒が好きで、タバコをよく吸う人はとくに注意する必要があります。また、男性は女性に比べ6倍も食道がんを患う可能性が多いこともわかっています。
男性の喫煙率・飲酒率の高さが、食道がんを患う男性が多い理由です。
食べものつっかえ感、食道にしみる痛みなど、体調がおかしいと感じたら、内科や消化器内科の診察を受けるようにしましょう。
食道がんの原因
食道がんになりやすい生活習慣および体質をまとめると次のような内容となります。
- アルコール摂取量が多い
- タバコを吸う習慣がある
- 熱い食べ物を好んでよく食べる
- お酒をのむと顔がすぐに赤くなる
- お酒が弱いのに飲酒機会が多い
などです。
逆流性食道炎
胃酸が食道に逆流して上がってくることで、食道に炎症が起こる症状を「逆流性食道炎」といいます。 胸焼けやげっぷが出る逆流性食道炎は、近年増加傾向にあります。
食道は酸に弱いため、胃酸の逆流にさらされ続けると「バレット食道」とよばれる粘膜に変わっていきます。 このバレット食道は食道がんになりやすいため、注意が必要です。
過去に内視鏡検査を受けてバレット食道を指摘されたことがある方は、定期的な検査をおすすめします。
食道がんの診断
内視鏡検査
食道がんの診断では、内視鏡による検査がもっとも有用です。
近年では拡大内視鏡が使用され、さらに内視鏡検査の需要が増えてきました。
X線検査(レントゲン検査)
バリウムとよばれる胃部造影剤を飲んでいただき、レントゲンを撮影する検査です。
手術前の部位診断や瘻孔の存在診断では、X線検査が有用となる場合もあります。
X線検査と内視鏡検査を比較した場合、「早期がん」に関する診断は、内視鏡の方が遥かに優れています。
以前はスクリーニング検査としてX線検査が実施されていましたが、現在はその需要はほとんど無くなりました。
それだけ、内視鏡検査の精度が上がっているといえます。
CT、MRI、超音波内視鏡
腫瘍から遠隔部の臓器(あるいは遠隔部のリンパ節)に拡がったがんを遠隔転移といいます。
遠隔転移のように、腫瘍周囲の組織への広がりを診断するには、CT、MRI、超音波内視鏡等を使った検査が有用です。
超音波内視鏡検査については遠隔転移の状況だけでなく、がんがどれくらい深部まで広がっているかなど、がんのステージ(病期)を診断する検査としても役立ちます。
食道がんの内視鏡画像
食道がんの治療
内視鏡的切除
早期診断によって発見された「がん」のほとんどは、内視鏡切除が選択されます。
ただし、一部の腫瘍系が大きいもの、病変数が多いもの、少し奥まで広がり進行している病態については、適用が難しい場合もあります。あくまでも診断によって、治療方法は確定します。
内視鏡的切除が難しい場合は、手術治療や放射線化学療法が検討されます。
外科的切除
内視鏡的切除による治療が難しいと判断された病態や、他臓器転移陽性例を除いた食道がんに対しては、外科的切除が検討されます。
食道がんは
- 頸部
- 胸部
- 腹部食道
と、大きく3つに分類されます。
がんの状態や場所を考慮した上で、最適な手術方法が選択されます。
食道がんの治療では、内視鏡手術によって行われるケースが増えております。
がんをすべて取り除くことを目標とする根治手術では、これまで主に開胸手術が選択されてきました。
しかし、内視鏡手術は傷を最小限に抑えられ、開胸手術と同じような根治を目指した手術ができるようになりました。術後の回復も早い傾向にあります。
とはいえ、内視鏡手術の難易度は高く、どこの医療機関でも行えるものではありません。
放射線化学療法
切除不能な食道がんについては、放射線化学療法が検討されることもあります。
欧米では外科的手術と同じくらい、放射線化学療法による治療が行われています。
日本では、手術療法の成績が他国よりも優れているという点もあり、手術療法を選択するケースが多くなっています。化学療法が必要な方は関連の病院を紹介させて頂きます。