糖尿病とは
糖尿病とは血液の中の糖分(血糖)が増えすぎてしまう病気です。
血糖が高くなると名前の通り「尿に糖がでる病」から糖尿病とよばれます。膵臓から血糖を下げるホルモンであるインスリンが不足することが原因です。糖分(血糖値)が高いままで過ごすと、全身の血管と神経が傷みます。手足のしびれ、視力の低下、心臓病、腎不全といった病気につながります。
糖尿病の初期は目立った症状はでませんが、病気が進行すると疲れやすい、異常な食欲、のどの渇き、トイレの回数がふえるなどの症状がでてきます。
心臓、眼、腎臓の重篤な糖尿病からひきおこされる病気を予防するために、運動療法、食事療法を中心とした生活習慣の改善と適切な治療が大切です。
糖尿病の原因
糖尿病を引き起こす原因は大きくわけて2つあります。遺伝的素因と生活習慣です。
膵臓から出るインスリンの量は遺伝的な影響を受けます。近い血縁者、父母、兄弟姉妹に糖尿病の方がいると糖尿病になりやすいことが知られています。家族的に糖尿病の素因をもっている方は、糖尿病がでる前から甘い物をひかえ適度な運動を心がけるとよいでしょう。
遺伝的な素因がない方でも、生活習慣の乱れが糖尿病発症の引きがねとなります。ジュースやお菓子の食べ好き、運動不足からの肥満が血糖値を上げます。過剰な糖分をひかえ、適度な運動をして肥満に気をつけることが予防につながります。また年齢とともに、加齢現象としてインスリンの分泌が低下するため糖尿病が発症しやすくなります。
以下の方はとくに糖尿病に注意する必要があります。
- 家族に糖尿病の方がいる
- 太りすぎ
- 運動不足
- 40歳以上
糖尿病の症状
初期の糖尿病は自覚症状がほとんどありません。そのため初期の糖尿病は職場健康診断やドックの血液検査で血糖値が高いことを指摘され見つかることがほとんどです。血糖値が高い状態がつづくと、異常なのどの渇き感、トイレの回数が多くなる、倦怠感、理由もなく体重が急に減るなど症状がでてきます。血糖が上がることで悪循環がおきるためです。血糖値が上がることで尿の糖が増える、尿の糖が増えると一緒に大量に尿がでる、そしてのどが渇く、多くの糖が尿から出るのでカロリーを失い体重が減る、強い空腹感がでるため異常に食べることになります。
血糖値が上がるにしたがって腎臓が大量の糖を薄めるために余分な水分を排出して、尿を過剰に作るようになるので、大量の尿が頻繁に出るようになります。そして、尿が大量に出ると、とてものどが渇くようになります。また、カロリーの多くが尿で失われるので、体重が落ち、強い空腹感を感じます。 自覚症状に乏しいのが糖尿病の特徴です。体調の異変を自覚したときには、気のせい、年のせい、として放置せず、早い段階で糖尿病に気づき生活習慣の改善が有効です。
糖尿病の検査
糖尿病の検査は血液検査を行ないます。血液中の血糖値(ブドウ糖)とHbA1c(グリコヘモグロビン)を調べます。HbA1cは赤血球にくっついたお砂糖(ブドウ糖)の量を測定した値です。血糖値が低いとくっつくブドウ糖が減るのでHbA1c値は下がり、糖尿病の状態が悪いとくっつくブドウ糖が増えHbA1cが上がります。過去1ヶ月の平均の血糖値が反映されます。HbA1cを7.0%以とするのが糖尿病の治療目標です。
糖尿病治療方針の判断に、体からどれぐらい血糖を下げるホルモンが出ているかを調べるためにインスリン値を調べることもあります。インスリンがからだから十分出ている(インスリン高値)にもかかわらず糖尿病の状態悪いときには、肥満や運動不足でインスリン感受性が下がっている状態であり、運動で筋肉をつけたり、肥満の改善が有効です。逆にインスリン値が低く糖尿病の状態が悪いときには、インスリン分泌を調節する薬での治療となります。長く糖尿病を患うと全身の血管、神経に合併症が起こります。合併症について、尿検査、眼底検査、頸動脈エコー検査などで、全身に糖尿病の影響がでていないか検査します。血管が豊富な、腎臓、眼(眼底)に糖尿病の影響が出やすいので注意が必要です。尿にアルブミン(蛋白質の一種)が糖尿病性腎障害の初期にでてきます。尿中微量アルブミン測定が早期の腎障害の合併症確認に有用です。糖尿病の合併症である糖尿病性網膜症を調べるために眼底検査をおこないます。
糖尿病の合併症
なぜ、糖尿病を治療するのか?
血糖が高いから、治療する。
その通りですが、本当の理由は合併症の予防です。 血糖値が高いと全身の血管、神経に影響がでます。糖尿病の合併症は多岐にわたる臓器に起こりうります。糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害が糖尿病の3大合併症です。糖尿病による血管への影響は、眼、腎臓以外に、心筋梗塞、狭心症など心臓の病気、脳梗塞、脳出血などの脳卒中など多岐にわたります。糖尿病性腎症が腎不全にいたると、人工透析による治療が必要となります。初期に糖尿病に気づき生活改善、治療をすることで合併症の予防、増悪をふせげます。
糖尿病の治療
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があり、治療方法が大きくことなります。
1型糖尿病は、からだからインスリンが全く出なくなるタイプの糖尿病です。インスリンの自己注射が治療の中心となります。尿へ余分な糖分(ブドウ糖)をどんどん捨てて、血糖を改善する作用のあるSGLT2阻害薬を併用することで、必要なインスリンの量を減らし低血糖の副反応を減らす新しい治療方法が最近開発されています。
2型糖尿病は、食べ過ぎや運動不足、肥満、睡眠不足などの生活習慣が引きがねとなりおきるタイプの糖尿病です。大人になってからなる糖尿病のほとんどがこのタイプです。食事療法、運動療法を中心として、糖尿病の状態に応じて糖尿病の薬の内服や注射が治療法になりなす。
食事療法
食事療法は理想の体重を算出、それを基準に一日の摂取エネルギーの目安を作成します。食事による肥満の改善が目的です。食事を抜くと血糖が下がりすぎるために、低血糖を起こしていると体が感じ血糖を上げるホルモンを出します。その結果血糖の上下が激しくなり、糖尿病のコントロールが悪くなります。食事を抜くなどの過剰な節制は逆効果で、朝昼晩のバランスが取れた食事が理想です。
運動療法
運動することにより肥満解消、筋肉がつくことで体の代謝が改善、血糖値が改善します。体を鍛えるための運動ではありませんので息があがるような激しい運動である必要はありません。30分から40分以上続けて行えるような有酸素運動が理想です。ウオーキング、スイミングなどがよいでしょう。
糖尿病治療薬
糖尿病の薬は多くの種類があります。年齢、体格、全身状態、体から出ているインスリン量など総合的に判断して、適切な薬を処方します。 西宮市中島クリニックでは、運動療法、食事療法で効果が不十分な際には、ビグアナイド薬やSGLT2阻害薬から内服開始を相談しています。ビグアナイド薬は低血糖の副反応がほとんどなく、心筋梗塞、脳卒中などの血管系の合併症を減らすことが証明されている薬です。またSGLT2阻害薬は余分な糖を尿にすてて糖尿病が改善するとともに、体重を減らす働きもあり肥満の改善にもつながります。どの薬が合うかは患者さんの病状、経過により全く異なりますので診察の時にご相談ください。
- αグルコシダーゼ阻害薬:食べた食事の吸収を遅らせる薬です。薬の名前グルコバイ、ベイスン、セイブルなど
- ビグアナイド薬:肝臓での糖分解をおさえるとともにインスリンの効きをよくします。薬の名前メトグルコ、グリコランなど
- スルホニル尿素薬(SU剤):インスリンの分泌をよくする薬です。薬の名前オイグルコン、グリミクロン、アマリールなど
- DPP4阻害薬:インスリン分泌を調節する薬です。薬の名前ジャヌビア、グラクティブ、エクア、ネシーナ、トラゼンタ、テネリア、スイニー、オングリザ、ザファテック、マリゼブなど
- SGLT2阻害薬:尿に余分な糖分を捨てる薬です。薬の名前スーグラ、フォシーガ、ルセフィー、アプルウエイ、ジャディアンスなど
その他、ビグアナイド薬、チアゾリン薬、グリニド薬
大切なこと2つ
糖尿病の初期はほとんど自覚症状がありません。初期に糖尿病に気づき生活改善できるように、職場の健診や特定健診で血糖とHbA1cを調べましょう。40歳を過ぎた頃から糖尿病が増えてきます。 糖尿病治療は合併症予防のためです。特に血流が豊富な臓器である眼、腎臓の合併症がでていないか定期的にチェックしましょう。眼底検査、検尿、採血でわかります。