腎臓の病気を患っている方の数は年々に増加傾向にあります。
現在33万人が透析治療中、さらに毎年4万人が新規透析導入となっています。
透析導入予防のために、腎機能障害の早期発見、生活改善および治療が重要です。
中島クリニックのある西宮市でも、特定健診で腎機能障害を早期に発見、生活改善をするために「西宮市国民健康保険 慢性腎臓病(CKD)予防連携事業」がスタートしています。
■腎臓専門医のみならず、一般内科医も患者さんの腎機能を慎重にフォローする必要がある
腎障害進行予防のため、腎臓専門医のみならず、一般内科医、さらには消化器内科医、循環器内科医など各科に専門特化している医師もみな、腎機能に留意していく必要があります。
日本腎臓学会と日本糖尿病学会専門医間の紹介基準を作成した基準があります。糖尿病でフォロー中の患者さんが腎障害を併発したときにどのタイミングで腎臓専門医にコンサルトするかの基準です。
糖尿病専門医から腎臓専門医への紹介基準は、糖尿病専門医だけでなく一般内科医の日々の診療でも意識しておく必要があります。
■日本腎臓学会と日本糖尿病学会が作成した紹介基準
日本腎臓学会と日本糖尿病学会は両学会の専門医間の紹介基準を作成し、学会のホームページに内容をアップしています。
内容は以下のリンクからPDFで提供されています。
(Citation: 日本腎臓学会ホームページ https://www.jsn.or.jp/topics/notice/_3537.php)
■糖尿病専門医から腎臓専門医への紹介基準 コンサルトのタイミング
紹介基準に具体的な数値が記載されていますが ・尿タンパク量 ・eGFR
を慎重にフォローしていくことがポイントです。
0.5 g/gCr 以上の尿蛋白 入院中の患者さんでは1日蓄尿が可能ですが、日常診療で1日蓄尿で蛋白量の確認は困難です。 随時尿のクレアチニン補正(UPCR)で1日尿蛋白量を推定できます。
eGFRは年齢で基準がかわります。
40歳未満は60ml/min/1.73m2 未満 40歳以上75 歳未満は45 ml/min/1.73m2 未満 75歳以上は45 ml/min/1.73m2 未満 となります。
糖尿病専門医から腎臓専門医への紹介基準 (紹介後は診断結果に応じて併診あるいは糖尿病専門医での糖尿病治療の継続)
1.糖尿病網膜症を伴わない 0.5 g/gCr 以上の尿蛋白
2.集学的治療後も遷延する 0.5 g/gCr 以上の尿蛋白
3.円柱もしくは糸球体型赤血球を伴う顕微鏡的血尿かつ 0.5 g/gCr 以上の尿蛋白
4.顕性蛋白尿を伴わない腎機能低下(年齢別) 40歳未満:eGFR 60ml/min/1.73m2 未満 40歳以上75 歳未満::eGFR 45 ml/min/1.73m2 未満 75歳以上:eGFR 45 ml/min/1.73m2 未満で腎機能低下が進行する場合
5.3 か月以内にeGFR が30%以上低下する急速な腎機能低下
■糖尿病専門医から腎臓専門医への紹介基準 治療管理依頼のタイミング
腎機能が悪化して、腎臓専門の継続治療管理が必要となる基準です。 ネフローゼや重度の腎機能障害(eGFR 30ml/min/1.73m2 未満)の状態です。
主に腎臓専門医による継続管理を目的とした紹介基準 (紹介後は腎臓専門医での継続管理あるいは糖尿病専門医との併診加療)
1.保存期腎不全(eGFR 30ml/min/1.73m2 未満)
2.ネフローゼ症候群(血清アルブミン値3.0g/dL 以下かつ尿蛋白3.5g/gCr 以上)
3.eGFR 10 ml/min/1.73m2/年以上の腎機能低下
4.薬物療法が必要な電解質異常 (高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症)や代謝性アシドーシス
5.薬物療法が必要な腎性貧血あるいは ESA 低反応性貧血 (複数回の検査で Hb 値11g/dL 未満)
6.治療抵抗性の体液貯留(心不全・浮腫)や高血圧
■かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準
かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準が日本腎臓学会と日本糖尿病学会ホームページにアップされています。
内容は以下のリンクからPDFで提供されています。 かかりつけ医から専門医・専門医療機関への紹介基準
■まとめ
腎臓の病気を患っている方の数は年々に増加傾向にあり、腎臓専門医のみならず、一般内科医も患者さんの腎機能を慎重にフォローする必要がある時代です。
糖尿病専門医から腎臓専門医への紹介基準が学会から提唱されています。紹介基準に具体的な数値が記載されています。
・尿タンパク量
・eGFR
を慎重にフォローしていくことが大切です。