医療コラム

2021.06.02内科全般

胸部レントゲンのAI診断は人をついに越えるのか

人工知能(AI)は人越せないだろうと言われていた囲碁の世界で、人工知能のアルファーゴがプロ棋士を負かしたが2015年でした。わずか3年前の話です。

その後さらに人工知能は発達、医療の分野でも人工知能が実用化されつつあります。

特に人工知能が本領を発揮するのは画像診断の分野です。

多数の画像を読み込み、そこからのパターン認識です。

■2018年にはアメリカでAI(人工知能)による糖尿病性網膜症診断機器が実用化

2018年には眼底写真のAIによる診断機器がアメリカFDAにより認可されました。

参考記事

●骨折のAI診断|アメリカでは医療現場へのAI導入が加速

●アメリカでAI(人工知能)による糖尿病性網膜症診断機器が実用化|FDAが人工知能検査機器「IDx-DR」認可

糖尿病を患っていると、全身の血管がもろくなり出血することがあります。

特に出血が問題となるのは眼の血管です。眼の血管からの出血が続くと失明の原因ともなります。

早期発見早期治療が必要です。

当院でも糖尿病治療中の方は、眼科クリニックへ定期的に紹介受診していただき、眼底をチェックしてもらっています。

AI(人工知能)による糖尿病性網膜症診断機器がアメリカでは実用化されています。

日本に輸入され認可されるのも時間の問題です。

■胸部レントゲンの人工知能診断

胸のレントゲン、これを人工知能AI診断できないだろうか。

この分野の研究ものすごい勢いで進んでいます。

2018年11月に論文報告された結果があります。

(Citation: Rajpurkar P et al. Deep learning for chest radiograph diagnosis: A retrospective comparison of the CheXNeXt algorithm to practicing radiologists. PLoS Med. 2018 Nov 20;15(11))

画像診断を専門とする放射線科医師 vs 人工知能

ガチンコ勝負の結果は、14項目のうち11項目が引き分けでした。

2項目で放射線科医師が優位。その項目はヘルニアと心拡大の判断。

1項目は人工知能が優位。その項目は無気肺の判断です。

2018年の報告では、人と人工知能互角、やや人が優位のところまで人工知能追いついてきています。

そして2019年のJAMAに報告された論文では、人工知能が人を上回ってきている結果です。

(Citation: Hwang J et al. Development and Validation of a Deep Learning-Based Automated Detection Algorithm for Major Thoracic Diseases on Chest Radiographs. JAMA Netw Open. 2019 Mar 1;2(3))

ついに胸部レントゲンの診断において、人工知能は追いつきそして追い越すところまで来ています。

■人工知能と人の判断を相補しあえばよい

人工知能による胸部レントゲン読影は、人と遜色のないレベルにまで到達しています。

しかし、2018年の報告をみてわかるように、人がやや判断苦手な部分を人工知能が得意であったり、逆に人の判断の方が正確である部分もあります。

心電図計には人工知能ではありませんが、機械がリズム、形を読み取る機械診断が付いています。

ただ機械診断が常に正しい判断をするとは限らず、医師は必ず自分の目で判断を下します。

将来的には胸部レントゲンの読影は人工知能に取ってかわられるものではなく、人の診断を人工知能でダブルチェックする形になっていくのではないでしょうか。

■まとめ

胸部レントゲンの読影、人工知能は人に追いつき、追い越すところまで発達しています。

今後心電図の機械診断のように、胸部レントゲンにも機械診断がついてくる時代になりそうです。しかも、比較的近未来の話です。

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