1989年にアメリカのカイロン社によって発見されたC型肝炎ウイルス、インターフェロンを中心に治療が行われてきました。
2015年以降、直接ウイルスに作用してウイルスを消す治療が(インターフェロンフリー治療DAA)が使えるようになり、劇的な治療効果が得られています。
・ハーボニー(ソフォスブビル、レディパスビル)
・ヴィキラックス(オムビタスビル、パリタプレビル、リ・トナビル)
・エレルサ/グラジナ(エルバスビル/グラゾプレビル)
・マヴィレット(グレカプレビル、ピブレンタスビル)
などの内服薬です。
■慢性肝炎の経過
C型肝炎治療をするのは、肝炎を治すためです。さらには慢性肝炎が続いた結果起きてくる肝がんの予防です。
正常肝臓→慢性C型肝炎→肝硬変→肝がん
慢性C型肝炎の段階でウイルスが消して、肝硬変、肝がんを予防するのがインターフェロン治療や現在主流のインターフェロンフリー治療(DAA)です。
インターフェロン治療は、肝硬変への進展、肝細胞癌発症の予防につながることがさまざまな研究から分かっています。
■インターフェロンフリー治療(DAA)が肝細胞癌を増やす?
インターフェロン治療は、肝硬変への進展、肝細胞癌発症の予防につながることがさまざまな研究から分かっています。
C型肝炎ウイルスを消し去るインターフェロンフリー治療(DAA)も肝硬変への進展、肝細胞癌発症の予防につながることが予想されます。
ところが、その予想に反する報告が2016年スペインのバルセロナの研究グループから報告されました。肝細胞癌を根治治療した後に、インターフェロンフリー治療(DAA)でウイルスを消すと、肝細胞癌再発率が増える可能性を示す報告でした。
この報告は母集団が特殊であることと、症例数が限られていることから、DAA治療で肝がんが増えることがあるのかどうか、その後の研究結果を待つ必要がありました。
しかし、その後の多数の報告でDAA治療群で、治療していない群よりも、肝がん再発が減ることが分かってきました。
当初のスペインからの報告は杞憂に終わったのです。
■C型肝炎インターフェロンフリー治療(DAA)で肝がん、死亡リスクが低下する
2012年から2015年にフランスの32施設で治療された10166例のコホート研究の結果がLancetに報告されました。
待望のコホートの結果です。
結果
全死亡リスクは52%低下 (adjusted HR 0.48, 95% CI 0.33-0.70)
肝細胞癌リスクは34%低下 (adjusted HR0.66, 95% CI0.46-0.93)
(Citation: Carrat F et al. Clinical outcomes in patients with chronic hepatitis C after direct-acting antiviral treatment: a prospective cohort study. Lancet. 2019 Feb 11. pii: S0140-6736(18)32111-1)
C型肝炎インターフェロンフリー治療(DAA)で肝がん、死亡リスクが下がることが明らかとなりました
■まとめ
インターフェロン治療に比べ、格段に副作用が少なく、治療効果の高いインターフェロンフリー治療(DAA)です。
当院で施行したDAA治療、全員がSVR(ウイルスが消失している状態)となっております。
当初のスペインからのDAAで肝がん再発が増えるかもしれないとい話は杞憂におわり、コホート研究でC型肝炎インターフェロンフリー治療(DAA)で肝がん、死亡リスクが下がることが明らかとなりました。