咳発熱のいわゆる風邪とともに、お腹のかぜ(ウイルス性胃腸炎)も西宮市で流行しています。
インフルエンザ流行の季節も、胃腸炎が流行の季節も、手洗いによる予防励行です。
「お腹のかぜ、ウイルス性胃腸炎ですね」と診察室でお伝えすると、ほぼ100%の確率で聞かれるのが「ノロ」でしょうか?です。答えの一助となるようにノロウイルスについて、2-3分程度で読めるようにまとめてみました。
私の学生時代には「ノーウオークウイルス」と習った食中毒の原因となるウイルスが今は「ノロウイルス」です。
病原菌やウイルス名の呼び名変わること時々ありますね。
偽膜性腸炎の原因菌として有名なクロストリジウム・ディフィシ(Clostridium difficile)はクロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)に改名されています(2016年)。マニアックな話ですが。
■ノロウイルスとは
1968年アメリカのノーウオーク町の小学校で集団発生した胃腸炎の患者さんから発見されたウイルスです。地名を冠してノーウオークウイルスと呼ばれていました。その後ノーウオークウイルスに似た小型球形ウイルスが次々と発見され、ノーウオークウイルス、ノーウオーク類似ウイルスなど呼び名が混在しておりましたが、2002年国際ウイルス分類委員会で、ノロウイルス属と分類されることになりました。
■ノロウイルスによる症状
吐き気、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な方は軽症で回復しますが、子どもや持病をもっている方は重症化することがあります。発熱は軽度で、これらの症状が1-2日続いたあと軽快します。 潜伏期間(感染してから症状がでるまでの時間)は24-48時間と比較的短いのが特徴です。
■ノロウイルスはどこから感染するのですか
ノロウイルスは手に付着したウイルスや汚染した食品などから感染します。口から入ることで感染しますので、手洗いによる予防が大切です。 ノロウイルスに感染した方の嘔吐物、便には大量のウイルスが排出されますので扱いに留意する必要があります。 ノロウイルスは熱に比較的強く85℃以上で少なくとも1分以上加熱する必要があります。
■ノロウイルスが流行するのはいつですか
A年中発生するのですが、冬場に増える傾向があります。特に12月から1月が発生のピークです。毎年5000人以上のノロウイルスによる食中毒が発生しています。
■診断のためにどんな検査をするのですか
A臨床症状や周囲の感染状況などから総合的に判断してノロウイルスが原因と推定する臨床診断が中心となります。
便から検査をする「ノロウイルス抗原検査」は3歳未満、65歳以上の方、悪性腫瘍の診断が確定している方等を対象に健康保険が適用されています。医師が医学的に必要と認めた場合に行われ、診断の補助に用いられます。「ノロウイルス抗原検査」は15分程度で結果が分かる迅速キットもあります。結果が早くでるメリットがありますが、ノロウイルスに感染していても陽性にならない場合もあり、ノロウイルスに感染していないことを確かめることはできません。「ノロウイルス抗原検査」は診断補助の位置づけです。
食中毒や集団発生の原因究明のためにRT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法などのウイルス遺伝子の有無を直接調べる検査は行政機関等で行われることがありますが、これらの遺伝子検査は保険診療では行えません。
中島クリニックではノロウィルスの簡易検査は行っておりません
■ノロウイルスの治療方法
ノロウイルスに効く抗ウイルス薬はありません。ノロウイルス胃腸炎の治療は対症療法となります。下痢、嘔吐にともなう脱水症状の改善のため、水分摂取、脱水がひどい場合には点滴治療が必要となることがあります。