インフルエンザワクチンには重症化予防効果がある
天然痘が天然痘ワクチンにより地球上から撲滅できたように、ワクチンによる予防は感染症に絶大な効果があります。
麻疹(はしか)風しん(三日ばしか)もワクチン接種で、予防できます。日本で風しんが散発的に発生していますが、ワクチンを受けていない30代が感染の中心です。
麻しん風しん混合ワクチンを2回接種して、十分な抗体をもっている人が感染することはありません。
毎年冬になると流行するインフルエンザ、流行が予想されるタイプに合わせたインフルエンザワクチンがあります。
インフルエンザワクチンは「接種すればインフルエンザにかからない」というものではありませんが、重症化予防の効果があります。
インフルエンザワクチンは病気に罹らなくするワクチンではなく、万が一罹っても、軽くすんだり、肺炎などこじらせてしまうことの予防です。
心不全患者さんはインフルエンザワクチン接種が効果的
心不全の治療方法を検討したPARADIGM-HF (Prospective Comparison of ARNI with ACEI to Determine Impact on Global Mortality and Morbidity in Heart Failure) にエントリーした患者さんのインフルエンザ予防接種と死亡率を検討した結果が2016年発表されました。
8,099人がPARADIGM-HF検討に参加、そのうち2割がインフルエンザワクチンを受けていました。1,769人 (21%)。
(Citation: Vardeny O et al. Influenza Vaccination in Patients With Chronic Heart Failure: The PARADIGM-HF Trial. ACC Heart Fail. 2016 Feb;4(2):152-158)
インフルエンザワクチンを受けている患者さん受けていない患者さん比較したとき、ハザード比で0.81( 95% confidence interval: 0.67 to 0.97)とワクチンを受けている方が遙かに死亡率が低い結果でした。
若くて普段健康であれば、インフルエンザしんどい病気ですが、発熱、咳などの症状で回復します。しかし、心不全状態であれば、インフルエンザに罹ることで心不全の悪化、さらには命に関わる事態になるのです。
心不全患者さんはインフルエンザワクチンを毎年接種することで心不全による死亡率をさげることができる
先日、デンマークから13万人(n=134,048)の心不全患者さんにおける、インフルエンザワクチンの効果を検討した結果がCirculation誌に報告されました。
(Citation: Modin D et al. Influenza Vaccine in Heart Failure: Cumulative Number of Vaccinations, Frequency, Timing, and Survival: A Danish Nationwide Cohort Study. published10 Dec 2018 Circulation)
上記PARADIGM-HFの結果と同じく、インフルエンザワクチンを受けることで死亡率が格段に下がっています。
死亡の原因を細かく分けて見てみると、心不全による死亡もインフルエンザワクチンを受けることで減っています。
さらに注目するべきは、インフルエンザワクチンを時々受けている患者さんより、毎年受けている患者さんの方が、遙かに死亡リスクが低くなっています。
心不全患者さんは、毎年のインフルエンザワクチン接種が効果的です。
西宮市中島クリニックのインフルエンザ予防接種対象者の方針
中島クリニックでは、持病をもっている方を中心に予防接種をするかどうか診察の時に相談しています。若い元気な人はワクチン接種不要というわけではなく、優先的に接種するべきは、持病を持っている方や65歳以上の高齢者と考えております。
具体的には、重症化や肺炎などの合併症を引き起こす可能性の高い方として
• 65歳以上の高齢者
• 肺の病気をもっている方(肺気腫、気管支喘息、非定型抗酸菌症)
• 心臓の病気をもっている方(心筋梗塞、狭心症、うっ血性心不全など)
• 腎臓の病気をもっている方(慢性腎不全、透析中の方)
• 代謝疾患をもっている方(糖尿病)
■まとめ
心臓の病気を持っているかた(特に心不全の患者さん)はインフルエンザ予防接種が効果的です。毎年のインフルエンザワクチン接種をおすすめします。