胃の中にすむヘリコバクター・ピロリが胃がんの原因であることは有名な話です。ピロリ菌がすんでいない胃からは胃がんがほとんど発生しません。一方ピロリ菌がいると慢性胃炎を引き起こし、胃がんのリスクが高まります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんとヘリコバクター・ピロリの関係は知られているところですが、さまざまな病気と関連があるとの研究報告があります。
■ヘリコバクター・ピロリと胃潰瘍、十二指腸潰瘍の関係
ヘリコバクター・ピロリがいると胃潰瘍、十二指腸潰瘍をひきおこします。ストレスやちょっとしたことで潰瘍は繰り返してしまいます。
ヘリコバクター・ピロリを治療(除菌)すると、潰瘍の再発をおさえることができます。
■ヘリコバクター・ピロリと胃がん
ヘリコバクター・ピロリがいると慢性胃炎をひきおこします。慢性胃炎が続くと胃の粘膜が腸に近づく現象がおきてきます。腸上皮化生とよばれ、胃が腸の粘膜のようになってしまいます。腸上皮化生は胃がんの前がん状態ともよばれ、腸上皮化生から胃癌が発生します。
ピロリ菌を除菌することで胃がんのリスクがさがることが証明されています。ピロリ菌がいれば除菌をすることが将来の胃がん予防につながります。
■ヘリコバクター・ピロリと特発性血小板減少性紫斑病
血を固まらすはたらきをもつ血小板が突然減る病気に特発性血小板減少性紫斑病があります。この病気は血小板に対する異常な免疫を体が作ってしまうことが原因です。免疫を押さえる薬や血小板を壊れにくくするように脾臓を摘出する手術などが治療となります。
この免疫の病気にヘリコバクター・ピロリが関連してきることが分かってきました。ヘリコバクター・ピロリが体にいることで、異常な免疫を作ってしまうのが一因です。ヘリコバクター・ピロリを除菌することで血小板の増加が望めるため、除菌治療が積極的にとりいれられています。
■ヘリコバクター・ピロリと糖尿病
さまざまな病気と関連がいわれているヘリコバクター・ピロリですが、最近では糖尿病との関連も提唱されています。ヘリコバクター・ピロリに感染している人と感染していない人をくらべると、ヘリコバクター・ピロリに感染している人の方が糖尿病が多いのです。
ヘリコバクター・ピロリと糖尿病の関連を調べた論文を多数集めて研究した論文が先日報告ありました。論文をあつめて検討する方法をメタ解析とよびます。この方法でわかることは、多くの論文を調べることで「傾向」がわかります。
この論文では「糖尿病」と「ヘリコバクター・ピロリ」の関係があるかどうかの傾向をみています。2227本もの論文から厳選した41本の論文を解析した結果です。
結果は ヘリコバクター・ピロリがいると糖尿病が1.27倍多い結果でした。
OR = 1.27 (95% CI 1.11 to 1.45, P = 0.0001, I2 = 86.6%).
なぜヘリコバクター・ピロリがいると糖尿病が増えるのかの原因はまだ特定されていませんが「糖尿病」と「ヘリコバクター・ピロリ」の関連はあると思ってよいでしょう。
(Citation: Helicobacter pylori infection as a risk factor for diabetes: a meta-analysis of case-control studies. BMC Gastroenterol. 2020 Mar 24;20(1):77)
■まとめ
ヘリコバクター・ピロリは胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなど以外に特発性血小板減少性紫斑病や2型糖尿病などさまざまな病気に関わっていることが研究で明らかになってきました。
胃カメラを受けてピロリ菌がいるかどうかをチェックしてみてはどうでしょうか。
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