医療コラム

2024.11.12医療コラム、胃カメラ、大腸カメラ

大腸カメラ検査で見つかる可能性のある病気

大腸カメラ検査とは、大腸の内部をカメラで観察する検査です。
この検査によって、大腸に異常がないかどうかを確認できます。

しかし、食事制限や下剤の内服など検査のための準備が大変です。
そして、検査自体も楽ではないため、できるなら検査をしたくありませんよね。

今回は、大腸カメラ検査で見つかる可能性のある病気について説明します。

これらの病気は、放置すると重篤な合併症や死亡に至る可能性があります。

大腸カメラ検査には、腸の健康を確認できるメリットがあります。
定期的に大腸カメラ検査を受けて、早期発見・早期治療を心がけることが重要です。

大腸カメラ検査とは

大腸カメラ検査とは、肛門から先端にカメラがついた内視鏡を挿入し、
大腸の内部を詳しく観察する検査です。

大腸カメラ検査でわかることは?

この検査でわかることは以下のとおりです。

  • ・大腸がんや大腸ポリープの有無や状態
  • ・大腸炎や潰瘍の有無や程度
  • ・大腸憩室や大腸メラノーシスなどのその他の異常

この検査は、重大な病気を早期に発見するために有効な方法です。

大腸カメラ検査はどこまで見られる?

大腸カメラ検査は、大腸の内部を詳しく観察する検査です。
肛門から内視鏡を挿入し、盲腸まで到達した後、
内視鏡を抜きながら大腸の粘膜をくまなく調べます。

大腸カメラ検査では、小腸の一部も観察できます。
小腸は非常に長いため、全てを観察できませんが、
大腸に続く小腸の最後の部分である回腸末端は観察可能です。

大腸カメラ検査を受けた方がいい人

大腸は食物の消化吸収や排泄をしているため、常に刺激を受けています。
そのため、異変が起こることも少なくありません。

  • ・血便、下痢、便秘、腹痛などの自覚症状がある方
  • ・大腸がん検診で便潜血反応が陽性だった方
  • ・家族に大腸がんなどの大腸の病気を持っている方
  • ・40歳以上になった方

リスクのある方は、定期的に大腸カメラ検査を受けることをおすすめします。

大腸カメラ検査で発見できる病気

大腸カメラでわかる病気は、以下のように分類できます。

  • ・腫瘍性疾患
  • ・炎症性疾患
  • ・先天性・遺伝性疾患
  • ・機能性・代謝性疾患
  • ・外傷・異物

それぞれの分類について、代表的な病気をわかりやすく説明します。

腫瘍性疾患

大腸に良性または悪性の腫瘍が発生する病気です。
大腸カメラ検査では、異常な部分から組織を採取して病理検査を行えます。
これにより、がんやポリープの種類や程度を判定ができます。

大腸がん

大腸の内側の膜(粘膜)にできる悪いしこり(悪性腫瘍)です。
このしこりは、大きくなると大腸の穴をふさぐことがあります。
また、しこりの一部がはがれて血液やリンパ液にのって他の臓器に移動することがあります。
これが、がんの転移です。

大腸がんは、早く見つけて治療すれば、完治する可能性が高くなります。
しかし、症状が出るのは進行してからになるため、定期的な検査が必要です。

大腸ポリープ

大腸の粘膜がぶつぶつと盛り上がった良いしこり(良性病変)です。
このしこりは、ほとんど症状がありませんが、放っておくと大腸がんに変わることがあります。
これが、がん化です。

腺腫性ポリープと呼ばれるものは、大きくなるとがん化する恐れがあるといわれています。
一方、非腫瘍性ポリープは、ほとんどがん化する心配はありません。
大腸ポリープは、大腸カメラ検査で見つけたら、その場で取り除けます。

カルチノイド

大腸では直腸にできることが多い、珍しいがんです。
粘膜にあるホルモンを出す細胞(神経内分泌細胞)からできる腫瘍です。

ほとんど症状がありませんが、腫瘍からの出血による下血があります。

直腸カルチノイドは小さくて平坦なことが多いので、
大腸カメラ検査では見逃しやすい場合もあります。

大腸脂肪腫

大腸脂肪腫とは、大腸の粘膜下層に発生する脂肪細胞からなる良性の腫瘍です。

消化管の腫瘍の中では、比較的まれで原因は不明になります。

一般的には無症状で、偶然検査や手術によって発見されることが一般的です。

しかし、腫瘍が大きくなると、腹痛や腹部不快感、便秘、下血が現れることがあります。

大腸内視鏡検査では、黄色調で表面が滑らかな正常粘膜に覆われた柔らかい病変として見つかります。

炎症性疾患

大腸の粘膜や壁が炎症を起こす病気です。

大腸カメラで、大腸の粘膜をみることで診断へとつながります。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、原因不明の炎症性腸疾患の一種です。
大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができることで、血便や下痢などの症状を引き起こします。
病変は直腸から始まり、上行性に広がることが多く、全大腸に及ぶこともあります。
大腸カメラ検査の所見は、診断や重症度の判定に重要です。
粘膜の赤みや腫れ、出血や粘液の付着、びらんや潰瘍などが見られます。

クローン病

クローン病は、消化管のどの部位にも炎症や潰瘍ができる難病です。
原因ははっきりとは分かっていません。
免疫機能の過剰や異常が炎症を引き起こし、腹痛や下痢、血便、体重減少などの症状を引き起こします。
また、腸の壁に穴が開いたり、腸が狭くなったり、膿の塊ができたりすることもあります。
大腸カメラ検査では、粘膜が赤く腫れたり出血したりしていることや、
非連続性の潰瘍があることが特徴的です。
また、大腸カメラ検査で採取した組織を顕微鏡で調べることで、
他の検査とあわせて確定診断します。

大腸憩室症

大腸憩室症は、大腸の壁の弱い部分が外側に突き出した袋状の憩室ができる病気です。

原因は不明ですが、食物繊維の摂取不足や高齢化などが関係していると考えられています。

主な症状は、下血(血便)、下痢、便秘、腹部不快感などです。

重度化すると、憩室内に便がたまって憩室炎(憩室に感染が起こること)や出血を起こしたり、穿孔や膿瘍が生じます。

内視鏡で見ると、大腸の壁に小さな穴があって、そこから憩室が見えます。

粘膜が赤く腫れたり、出血がある状態が憩室炎です。

先天性・遺伝性疾患

生まれつきまたは遺伝的に大腸に異常がある病気です。

これらの病気は、大腸カメラ検査でポリープの数や形を見たり、切り取って検査したりすることで診断できます。

巨大結腸

巨大結腸症は、生まれつき結腸の一部に神経細胞がなくて、便やガスが通りにくくなる病気です。
生まれつきのものと、後天的に起こるものがあります。

便秘や腹痛、吐き気や嘔吐などが主な症状です。
また、水分を吸収する大腸が正常に働かなくなるため、脱水症状になることもあります。

大腸カメラ検査で、結腸内に異常なガスや便がたまっていることや、結腸が拡張していることが確認できます。

家族性大腸腺腫症(FAP)

FAPとは、遺伝子の一部に変異が起こって、大腸にポリープが100個以上できる病気です。

ポリープは良性ですが、時間がたつと悪性に変わって大腸がんになる可能性が高くなります。

この病気は、親から子に遺伝することが多いのですが、新しく変異が起こることもあります。

便に血が混じったり、下痢や便秘、腹痛が主な症状です。
診断は、大腸カメラ検査の場合ではポリープの数や形を見ます。

ポイツ・イエガース症候群

ポイツ・ジェーガース症候群は、消化管にポリープと呼ばれる腫瘍が多発する病気です。
ポリープは良性ですが、大きくなると出血や腸閉塞などの合併症を起こすことがあります。
また、ポリープ以外にも、皮膚や粘膜に茶色の斑点ができることも特徴です。

この病気は遺伝性のもので、STK11という遺伝子に異常があることが原因です。
この遺伝子は細胞の増殖を制御する役割を持っていますが、
異常があるとその機能が失われてしまいます。

そのため、ポリープだけでなく、消化管や乳房、卵巣などの悪性腫瘍の発生リスクも高くなります。
ポイツ・イエガース症候群の診断方法の一つが大腸カメラ検査です。
大腸カメラ検査では、大腸に多発する過誤腫性ポリープを観察できます。
ポリープは、肉眼で他のポリープと区別できるほど、特徴的な形をしています。
また、ポリープの一部を切除して、病理学的診断や遺伝子検査を行うことも可能です。

ただし、大腸カメラ検査だけではポイツ・ジェーガース症候群の
診断には十分ではありません。
この病気では、小腸にもポリープが多く見られることが多いため、
上部消化管内視鏡検査や小腸内視鏡検査も必要です

悪性腫瘍の発生リスクも高いため、消化管以外の部位も含めて定期的に
検査を受けて早期発見・早期治療を目指すことが重要です。

機能性・代謝性疾患

大腸の形や構造に異常はなくて、機能や代謝に問題がある病気です。
ただし、診断には、大腸カメラだけではなく、他の検査や症状なども考慮する必要があります。

大腸偽閉塞

大腸偽閉塞とは、大腸の動きが悪くなって、食べ物や便が詰まってしまう状態です。

これにより腹痛や腹部の膨らみ、吐き気などの症状が起こります。

機械的な原因で、腸が詰まる腸閉塞とは異なります。

さまざまな全身性の病気や手術後の合併症などによって、大腸の神経や筋肉の働きが低下することが原因です。

大腸偽閉塞は、急性型と慢性型に分けられます。

大腸カメラ検査では、大腸偽閉塞の状態を見ることが可能です。

大腸は太くなり大腸の壁には水と空気の境界線ができて、大腸の動きも弱くなります。

これらの所見を見つけることで、大腸偽閉塞の診断に役立ちます。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは、ストレスや自律神経の乱れなどによって腸の働きが異常になり、
便秘や下痢、腹痛などの症状が長く続く病気です。

過敏性腸症候群は日本人の約10%に見られると言われており、若い女性に多くみられます。

原因ははっきり分かっていませんが、感染性胃腸炎や食生活の乱れ、
睡眠不足などが関係していると考えられています。

大腸カメラ検査では、大腸に器質的な異常がないことが特徴です。
大腸の形や色、粘膜の状態などを観察し、
癌やポリープ、潰瘍、出血などの異常がないかを確認します。
ただし、それだけでは過敏性腸症候群と診断することはできません。

大腸メラノーシス

大腸メラノーシスとは、大腸の粘膜が褐色から黒色に変色する状態のことです。

これは、アントラキノン系という種類の刺激性下剤を長期間服用することで起こります。

大腸の粘膜にリポフスチンという色素が沈着し、メラノーシスを引き起こします。

大腸メラノーシスには、症状がありません。

大腸カメラで見ると、粘膜が黒っぽくなっているのがわかります。
そのため、大腸カメラ検査で偶然発見されることが一般的です。
粘膜の一部だけでなく、全体に黒くなっていることもあります。
ポリープも見つかることがあり、その場合には切除や生検をする可能性もあります。

虚血性腸炎

虚血性腸炎とは、大腸の粘膜に十分な血液が行き届かなくなることで、
炎症や潰瘍などの障害が起こる病気です。

虚血を引き起こす原因には、血管側の要因と腸管側の要因があります。

主な症状は、突然の強い左側腹部から下腹部の痛み、下痢、血便です。
これらの症状は、大腸の粘膜が損傷し、はがれ落ちたり出血したりすることによって起こります。
また、吐き気や冷や汗などが伴うことがあります。

虚血性腸炎の診断は、主に大腸カメラ検査です。
大腸の粘膜が、血液が足りなくなって炎症や壊死を起こし、赤く腫れたり出血します。
また、傷や穴、黒い変色がみられます。

外傷・異物

外力や異物によって大腸にダメージを受けることで起こる病気です。

腸アニサキス

アニサキスとは、アニサキスという寄生虫が食いつくことで発症する病気です。

アニサキスは、サバやイカなどの魚介類に寄生している細長い白い虫で、
生の魚介類を食べると感染する可能性があります。

アニサキスは胃酸や消化液に弱く、胃や小腸で死んでしまうことがほとんどです。
まれにアニサキスが小腸から大腸に移動することがあります。

食後数時間から数日後に、強い下腹部痛、吐き気、嘔吐、発熱などが腸アニサキスの症状です。
重症化すると、腸閉塞や腸穿孔を引き起こすこともあります。

診断は、大腸カメラ検査で行われアニサキスの虫体を確認し、除去することで治療します。

内痔核

内痔核は、直腸粘膜の下にある静脈叢がうっ血して膨らんだものです。
排便時の出血や脱出が主な症状です。

下血や排便時出血が続く場合は、大腸癌の可能性も否定できないため、
大腸カメラ検査を受けてみてください。

内痔核は自分ではなかなか気づきにくい部位で、気軽に人に相談できない部分です。
しかし、気になる症状はそのままにせずに医師に相談しましょう。

大腸カメラ検査で健康を守ろう

大腸カメラ検査は、大腸がんや炎症性腸疾患などの重大な病気を早期に発見するために必要な検査です。
この検査では、内視鏡を使って大腸の内部を見ることが可能です。
また、異常な部分を切除したり、組織を採取できます。

この検査は、苦痛や恐怖を感じる人も多いかもしれません。

しかし、大腸カメラ検査は鎮静薬や鎮痛剤の使用、
医師や看護師のサポートによって安全かつ快適に受けられるようになってきています。

自覚症状や家族歴がある場合は、大腸カメラ検査を受けることがおすすめです。
自分の健康を守るためには、大切な検査になります。

【参考サイト】

大腸カメラ(大腸内視鏡検査)で見つかる病気|東松戸の加賀谷正クリニック

大腸がんの原因と症状|MedicalNote

大腸がんとポリープの関係は?病理検査で悪性の場合についても解説!

大腸がんとポリープの関係は?病理検査で悪性の場合についても解説!|胃と大腸の内視鏡ナビ

大腸神経内分泌腫瘍(カルチノイド) | みんなの医療ガイド | 兵庫医科大学病院

大腸脂肪腫とは

大腸脂肪腫とは|えぞえ消化器内視鏡クリニック

潰瘍性大腸炎(指定難病97)|難病情報センター

クローン病(指定難病96)|難病情報センター

大腸憩室症 (だいちょうけいしつしょう)とは|済生会

巨大結腸症について | メディカルノート

家族性大腸ポリポーシス(FAP)

家族性大腸ポリポーシス(FAP) | 日本遺伝性腫瘍学会

ポイツ・ジェーガース症候群について | メディカルノート

慢性特発性偽性腸閉塞症(指定難病99)|難病情報センター

過敏性腸症候群について | メディカルノート

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大腸メラノーシス(偽メラノーシス)とは|えぞえ消化器内視鏡クリニック

虚血性大腸炎 (きょけつせいだいちょうえん)とは | 済生会

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