重症化のリスクを知って、正しく予防しよう。
Q:麻しんとはどのような病気ですか?
A:麻しん(はしか)は、麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症です。麻しんウイルスの感染経路は空気感染、飛沫感染、接触感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播し、10日~12日間ほどの潜伏期間を経て、発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れています。そして、2~3日熱が続いた後、39℃以上の熱や発疹が出現するのが特徴です。発疹は赤い粒状で、はじめに髪の毛の生え際や耳の前や下、首、顔に現れ、1~2日かけて体幹(胸、腹、背中)や手足にまで広がります。また、頬の内側の粘膜に(コブリック斑)よばれる白い斑点がみられることもあります。
感染力は極めて強く、空気感染します。免疫(麻しんの抗体)をもっていないっと誰もが感染しうる病気です。そのため、子どもだけでなく、大人も注意が必要です。
Q:今年の麻しんの発生状況について教えてください?
A:日本では2007年前後にかけて10~20代を中心に麻しんの大ぼな流行が発生し、2008年には1万人を超える患者数が報告されています。その後、ワクチンの定期接種が導入されたことにより、2015年には国内の患者数は35人まで激減。世界保機関(WHO)から日本は国内に土着のウイルスが存在しない「排除状態」と認定されるまでに減少しました。それからは海外から持ち込まれたウイルスに感染した患者が主になり、新型コロナウイルス感染症の流行から渡航時の水際対策が強化されると、2020年以降は10人以下にとどまっていました。
しかし、今年は5月までで昨年1年間の患者数を上回り10人の感染者が報告されています。なぜ今年になって急激に増加しているかと言うと、水際対策が終了し、渡航制限もほぼなくなったために、海外と日本国内の人の移動が再び活発になってきていることが原因と考えられます。また、コロナ禍の影響から、日本国内で麻しんワクチン接種率が低下しており、これも今後の流行に繋がる懸念材料になっています。
Q:麻しんが危険な病気と言われる理由が何ですか?
A:麻しんの感染力を基本再生産生=「1人の患者が何人に感染させるか」を数値化した指標で示すと、インフルエンザが1~2、新型コロナウイルス感染症が2~3に対し、麻しんは12~18と、感染症の中でも格段に強いとされています。そのため、免疫がない場合、感染者と同じ空間に数分間いただけで感染し発症する危険があります。
また、麻しんは合併症を発症するケースが多く、全体で約30%にも達するとされています。麻しんの主な合併症には次のものがあります。
【麻しんによる合併症】
●肺炎/麻しん患者の30人に1人以上の割合で発症
●中耳炎/麻しん患者の100人に約7~9人の割合で発症
●脳炎/麻しん患者の1000人に1人の割合で発症。約65%に後遺症が残る
●亜急性硬化性全脳炎/麻しんに羅患した後、約10万人に1人の割合で7~10年を経て発症する重い脳炎。脂肪例が多い
麻しんに羅患した場合、症状は1~2週間ほど続き、合併症がなければ次第に回復していきます。しかし、羅患後は免疫力が低下するため、しばらく他の感染症にかかりやすかったり、体力が戻るまでには1ヶ月ほど要することも珍しくありません。このように麻しんは合併症がなくても回復するには時間がかかる重篤な病気だと言えます。
Q:治療法や予防法について教えて下さい。
A:麻しんは特効薬がなく、解熱鎮痛剤の処方など対処療法しか治療法はありません。また、感染対策として手洗いやマスク着用を行ったとしても空気感染をするため予防ができません。最大の予防方法はワクチン接種になります。
麻しんワクチンによる免疫獲得率は1回の接種で93%~95%以上といわれ、2回接種を受けることで、基本的には麻しんに対し十分な免疫を持っていると言えます。もちろん、大人になってからでもワクチンを接種することは可能です。
Q:ワクチンの接種について教えて下さい。
A:麻しんワクチンは2006年度から1歳児と小学校入学前1年間の2回接種が始まりました。また、2008年度~2012年度の5年間は中学1年生と高校3年生相当の年代に2回目のワクチンが定期接種として導入されていました。
ワクチン接種歴を確認するには、母子手帳を見るのが確実です。しかし「確認できるものがない」「過去に麻しんに感染したとの断言できない」という場合や、実際に麻しんとは別の病気に羅患したことを勘違いしているケースも少なくありません。抗体の有無は内科などでの採血検査で確認できますが。すでに後退があった場合にワクチンを接種したとしても問題はありません。特に、定期接種の機会がなかった30~50代の世代は免疫不十分な場合が多いので、抗体の確認、もしくはワクチン接種が推奨されています。
現在、麻しんのワクチンは「MRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)」が使用されており、基本は自費になります(市町村により費用の助成制度がある場合も)。接種を希望される場合はかかりつけ医に一度ご相談ください。自分自身や家族、周囲の人を守るためにも麻しんの免疫について確認しておきましょう。