医療コラム

2023.03.20医療コラム

朝日新聞社アエラの取材を受けました。アルコールと健康の関係



「酒は百薬の長」ではなかった!

昔から、お酒の飲みすぎは体に悪いが、適量であれば健康につながると認識されていた。その理由には諸説あるが、たばこと違って「この量までは飲んでも大丈夫」という閾値(しきいち)があると考えられていたことが影響している。 しかし、「2018年に、世界的権威のある医学雑誌『ランセット』誌に掲載された論文によって、アルコールに閾値がなかったことがわかりました」  

この論文は、59万9912人の飲酒者データおよび、飲酒量と病気の関係を研究した83編のコホート論文を統合した大規模なもの。閾値がなかったことに加えて、1週間に純アルコール量100g以下(ビールなら1日500ml程度で純アルコールは20g)であれば、まったく飲まない人同様に健康リスクがほぼないこと、少量のアルコールであれば、心筋梗塞などの心臓病発症のリスクが低くなることがわかった。

その一方で、「アルコール量が増えれば、脳卒中をはじめとする心不全、がんといった病気のリスクが上昇することも判明しました」

さらに別の角度からも調査や研究は進んでいる。2022年11月には、2015年から2019年に死亡した20~64歳のアメリカ人のうち、およそ8人に1人はアルコール関連死であることが発表された。同国で過度のアルコール摂取による死亡者数は毎年約14万人に上るという。また、カナダ薬物使用・依存症センター(CCSA)では、2023年1月にアルコール摂取に関する指針を12年ぶりに改定。世界中で、「飲酒するなら量を減らすのが好ましい」という共通認識が広がりつつあるのだ。

規定の純アルコール量を守れば健康も守れる

健康リスクを避けながらアルコールを楽しむには、「週に2日の休肝日を設け、1週間に純アルコール量を100g(1日20g)に抑えるようにすればいいでしょう」
この数値を現代におけるお酒の適量と考えた場合、1日における飲酒量の例は以下になる。

種類 アルコール度数
ビール 1缶または中ビン1本(500ml) 5%
日本酒 1合(180ml) 15%
チューハイ 1缶(350ml) 7%
ワイン グラス2杯(100ml) 25%
ウイスキー ダブル1杯(60ml) 40%

1日における飲酒量の例

これから増える歓送迎会や花見では、1日に上記を守ることは難しい場合もあるだろう。たくさん飲みたい人は極力アルコール度数の低いものを選ぶか、飲みすぎた場合は数日間の休肝日を設けるなどして、「1週間に100g以下」を守るようにしたい。
また、低価格でアルコール度数が高い(8~9%)ことから近年人気のストロング系チューハイは、1缶で1日の純アルコール量を簡単にオーバーしてしまうので、気を付けたいと中島医師は続ける。

「アルコールを飲むと、体内ではDNAや組織の傷害性を持つ有害物質アセトアルデヒドが発生します。これらは、肝臓でALDH(アルデヒド脱水素酵素)によって酢酸に分解され、汗や尿となって体外に排出されるのですが、ALDHの量には個人差があります。さらに、一晩に肝臓で分解できるアルコール量は約40gと言われています。一般的には5~6時間ほどで分解されますが、翌日も頭が痛かったり、体がだるかったりする場合は、体がアルコールを分解できる以上の量を摂取していると考えたほうがよいでしょう」

ストロング系チューハイは清涼感があり飲みやすいため、こういった症状を起こす危険性が高いと考えられるそうだ。

酔いやすい「フラッシャー」の人は食道がんのリスクが5~16倍

以上が現代におけるアルコールとの上手な付き合い方だが、中島医師によると、そもそも飲酒自体を控えたほうがいい人もいるようだ。

「お酒を飲んでもまったく酔わない人もいれば、すぐに酔う人もいます。後者の場合は、アセトアルデヒドが溜まりやすいので要注意です。さらに、お酒を飲んで顔が赤くなる人もいます。これは医学用語で『フラッシャー』と呼ばれ、ほかの人と比べて食道がんのリスクが5~16倍も高いと言われています」

フラッシャーの場合、食道がアルコールで直接刺激されることにより食道がんのリスクが上がるという。また、一般的に男性よりも女性のほうがアルコールに弱いため、顔がすぐに赤くなる女性も多いそうだ。

これからの宴会シーズンを楽しく過ごすには、「週100g」の上限を守りたいもの。フラッシャーの可能性がある人は、まわりにあわせて飲むことは避け、無理のない量をたしなむ程度に抑えるよう気を付けよう。

引用元AERAdot
https://dot.asahi.com/dot/2023031100015.html?page=1

 

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