医療コラム

2022.11.08医療コラム、大腸

食の欧米化で増加中の大腸憩室炎

「奥さま手帳」の取材をうけ大腸憩室炎についてお話しました。
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わかりやすく説明しています。 是非ご覧ください。

食物繊維を接種し、便秘にならない予防が大切

大腸憩室炎大腸憩室炎は昨今の食事の欧米化に伴って増えている疾患の1つです。高齢者なら約半数はあるといわれる大腸にできる風船状の(憩室)が炎症を起こすことで腹痛や出血といった症状を引き起こします。その原因や日常で気を付けることなどを西宮市の中島クリニックが詳しく解説いたします。

大腸にできる憩室とは何か教えてください

憩室とは、消化管の壁の一部が外側に向かって風船のように飛び出て袋状になった状態のことで、そのほとんどが大腸で発生すると言われております。大腸の中はじゃばら状の管になっており、便や水分、ガスなどが充満していますが、腸管内圧のバランスが崩れて内圧が高くなると外側に膨らみ飛び出してしまうのです。
憩室を持っている人は40歳以下は20%前後、80歳以上なら40~60%と、50歳以上なら3~4人に1人はいると言われています。保有率は年齢とともに上昇していきますが、近年は20~30歳代の若い人にも増加傾向にあります。また、発生の頻度に男女差はないとされていますが、日本では一般的に男性の方が多いという報告もあります。
憩室には生まれつきの先天性と後天性がありますが、ほとんどは後天性に出現したものだと言われています。食物繊維の不足や加齢に伴う大腸の衰え、また便秘が続くことで糞便を送り出すための大腸の蠕動運動が過剰になって腹圧が上昇することなどが要因と考えられており、その原因は近年の食生活の変化の影響が大きいとされています。
【憩室ができる主な原因】
食物繊維の摂取不足/高カロリー、高脂肪な食事/加齢に伴う大腸の衰え/便秘/体を動かさない生活習慣/肥満/喫煙/大腸の構造の変化/遺伝などの家族歴/老廃物の通り方

Q,憩室はどの場所に発生しますか?

憩室の大さは5~10mm程度とさまざまで上行結腸や盲腸がある右側腹部やS状結腸のある左下腹部に生じやすいと言われています。昔は日本人は右側に憩室が多く、欧米人は左側に多いとされてきましたが、高カロリー、高脂肪食といった食習慣の欧米化が原因で、日本人も欧米人と同様のS状結腸付近にできるケースが増えています。数は1つだけでなく、複数個できる場合がほとんど、100個を超えるような多発憩室症の人もまれではありません。
憩室は一度できると自然消滅することはありません。基本的には症状がなく、憩室そのものは病気ではないので、放置していてもガン化することはありません。しかし、炎症を起こしたり、出血が見られた際は早急な治療が必要になります。30~40年前は大腸憩室炎の発生率は5%ほどでしたが、20年前から10~40%増加しています。

大腸憩室炎とはどのような病気ですか?

憩室は、健康診断などの大腸カメラや腹部CTなどで偶然発見されることが多く、通常は無症状のまま経過します。しかし憩室に糞便が溜まって閉塞したり、疲労などによって免疫力が低下することで、憩室内部で細菌が増殖すると炎症が生じます。この状態を大腸憩室炎と言います。
炎症が軽い時は腹痛や腹部膨満感、歩くと腹部が響くような痛み、下痢や便秘などを生じ、炎症が進むと腹部に加えて発熱、嘔吐することも。さらに炎症がひどくなると、憩室の周囲に膿がたまる膿瘍(のうよう)ができたり、憩室にせん孔(穴)が生じて細菌が腹部に漏れ出し、腹膜炎などの深刻な病態を引き起こします。腹膜炎では、激しい痛みや筋性防御と呼ばれる腹筋が過度に緊張して硬くなる所見が見られることも。
また、憩室からすると、痛みは感じないものの、突然の血便を発症することがあります。何の予兆もなく血便が始まった場合は、憩室からの出血の可能性も考えの1つとして覚えておきましょう。

診断や治療方法を教えて下さい。

無症状の場合は、特に治療の必要はありませんが、炎症を起こして何等かの症状が出て大腸憩室炎が疑われる場合は、問診や採血検査、腹部CT検査、腹部超音波検査などで大腸内部を調べて原因を特定してきます。
大腸憩室炎と診断されたら、軽傷であれば通院し、流動食などで腸管を休めながら経口抗菌薬の投与治療が中心となります。しかし、炎症の程度により腸管安静が必要な場合は、入院して絶食などの食事制限や点滴抗菌薬での治療を行います。さらに、大腸憩室炎に膿瘍を伴うほど悪化している重篤な状況では、チューブによるドレナージ(膜などを患者さんの体外に排出すること)や、症状が改善しない場合は大腸を切除する必要になることもあります。
また、大腸憩室炎と似たような症状である大腸がんや急性虫垂炎(盲腸)、腎臓病、婦人科系疾患などの病気と選別せうるために大腸の内視鏡検査を行うこともあります。

日常生活で心掛けることを教えてください。

大腸憩室炎は一度発症すると再発率が高いため、発症予防と再発予防が大切になります。特に気を付けたいのが、便秘にならない生活習慣を目指すこと。日頃から食物繊維の多い食事を心掛け、水分補給をするなど便秘にならないように気を付けましょう。肥満は発症リスクを高めるため、適度な運動を習慣にすることもおすすめです。
大腸憩室炎は、日常的に高頻度で遭遇する病気です。基本的には良性疾患のため、早期に治療を行えば恐れることはありません。しかし腹痛を放置しておくと重症化することもあるので「これぐらいの痛さなら大丈夫」と我慢せず、早めに専門医に相談しましょう。

知っておきましょう

大腸憩室と憩室炎について

大腸憩室炎憩室炎は上行結腸とS状結腸で起こりやすいと言われている。上行結腸で憩室炎が発症した場合は右脇腹から右下下腹部あたりに強い痛みを感じ、またS状結腸で発症した憩室炎では左脇腹から下腹部にかけて強い痛みを感じることが多い

覚えておきましょう

憩室ができるしくみ

日常的に食物繊維が少ない食事が多い
  ⇩
便秘になる
  ⇩
排便の腸のいきみ、または便を送り出すための腸の蠕動運動が過剰になることにより、腸内の圧力が高まる
  ⇩
腸の壁のもろい部分に圧力がかかり、腸の外側へ風船上に飛び出す

覚えておきましょう

予防のための生活習慣

大腸憩室炎大腸憩室炎の発症には、欧米型の食事や肥満などの生活習慣が関係しているとされている。主な原因となる便秘を予防する生活スタイルを心掛けよう。

  • 食物繊維の多い食習慣を目指す
  • 野菜や果物を多く摂る
  • 赤みの肉、精製された穀物、高脂肪乳製品などの摂りすぎに注意する
  • 規則正しい食生活で便通を整える
  • 肥満のならないよう、体を動かす生活スタイルを意識する
  • 過労や精神的緊張を避ける

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