新型コロナウイルス感染も、日本では一旦落ち着き、緊急事態宣言も徐々に解除されてきました。
新しい生活スタイルとして、厚生労働省は次のように生活様式を変化させることを推奨しています。
手洗い、うがいなどはもちろんのこと、今までのような生活スタイルから感染を防ぐ生活スタイルに移行するということですね。
食事もレストラン等外食するよりもデリバリーやテイクアウトを中心にした方が、お店での新型コロナウイルス感染を防げるので推奨されていますが、
暑くなってくるこれからの季節、テイクアウトやデリバリーする際に特に気をつけたいのが食中毒です。
お店では細心の注意を払って作っているでしょうが、買って帰ってすぐに食べずに、暑い室内に放置していたりすると、細菌が繁殖して食中毒になる恐れがあります。
その他にも気づかないところで食中毒を引き起こすことがあるので気を付けなければなりません。
意外なところで食中毒の危険性が
食中毒はさまざまで、細菌性、ウイルス、自然毒、化学毒、寄生虫などさまざまです。
中でも夏場は細菌性による食中毒が多く、冬場はウイルス性による食中毒が多く見られます。
日常生活の中で、思わぬ原因で食中毒になることも多いので気を付けましょう。
ではどのような状況で食中毒になるのでしょうか。
夏場に多い、食中毒をご紹介します。
カンピロバクターによる食中毒と症状
カンピロバクターは鶏、豚、牛などの腸内に生息している菌です。
犬や猫などのペットにも生息しています。
よくあるケースとしては、鶏レバーやささみなどの刺身、鶏肉のタタキ、鶏わさなどの半生製品を食べることによってカンピロバクターによる食中毒をおこしています。
市販の鶏肉には高い確率でカンピロバクター菌が存在しているという報告もあります。
カンピロバクターの症状
潜伏期間は1日~7日程度で、下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔気、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などが挙げられます。まれに血便を生じることがあります。
カンピロバクターに感染した数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する事があります。
カンピロバクターによる食中毒の予防
カンピロバクターの食中毒はしっかり予防すれば防ぐことができますが、
近年学校の調理実習などで増えています。
予防としては鶏肉などの食材をしっかり洗って加熱する。
その場合、生の鶏肉の表面にはカンピロバクター菌がついていることがあるので、
洗ったしぶきなどがまな板などにつき、生野菜などに汚染されるケースもあります。
調理器具もしっかり洗ってから使用するようにしましょう。
腸管出血性大腸菌による食中毒と症状
食中毒を起こす大腸菌は病原菌性大腸菌と呼ばれ、そのうちベロ毒素を出す大腸菌は腸管出血性大腸菌といいます。
代表的なものは、O-157、O-111などがあります。
O-157は動物の腸内に細菌が存在し、その肉を加熱不十分で食べることにより、感染します。
牛レバー刺し、ハンバーグ、牛タタキ、ローストビーフ、サラダなどから見つかっています。
過去には焼き肉店等で集団食中毒がおこったケースもあります。
腸管出血性大腸菌の症状
潜伏期間は2~9日と長く、最初は下痢と腹痛が起きます。
3日目ぐらいから激しい腹痛とともにベロ毒素によって大腸の粘膜が傷められ血便が出はじめます。
重症化すると「溶血性尿毒症症候群(HUS)」へと進行する場合があり、腎臓障害や神経障害を引き起こします。
腸管出血性大腸菌の予防
加熱により菌は死滅します。肉の中心部を75℃以上で1分以上加熱することで防ぐことができます。
肉の生焼けには注意しましょう。
サルモネラ菌による食中毒と症状
サルモネラ菌は人をはじめ、牛・豚・牛等の動物の腸管や河川・下水道等の自然界に広く生息する菌です。卵の殻などにもサルモネラ菌がついていることがあります。
(日本で流通している卵は殻を洗浄しているので安心です)
卵かけご飯など生卵を食べたことが原因で、サルモネラによる食中毒で子どもが死亡した事例があります。
賞味期限を過ぎた卵は生で食べないようにしましょう。
また、乳幼児や高齢者、妊娠中の女性、免疫機能が低下している方などは加熱調理して食べるようにしましょう。
サルモネラ菌による食中毒の症状
潜伏期間は6~72時間で少量でも発症します。
発熱、腹痛、吐き気、嘔吐などの症状があり、腸内を菌が好むので、無症状になっても保菌者となることがしばしばです。
飲食系従事者が検便の際、無症状でもサルモネラ陽性となったままだったので、仕事に就けなかったというケースもあります。
サルモネラ菌は汚染された調理器具や手指を介しても感染しますので二次感染が非常に高い食中毒です。
サルモネラ菌に感染した人と同じタオルを使ったり、トイレを使ったりすることで感染します。
衛生管理を徹底しておかないと二次感染の危険性があります。
サルモネラ菌食中毒の予防
- 卵や鶏肉の調理は75℃以上で1分以上の加熱を心掛けましょう。
- 卵は割って置いておかない。
- 割れた卵をそのまま放置しておかない。
- ペットに触った時は必ず手洗いする。
- 感染者の糞尿を処理した場合やトイレのノブなどはきちんと消毒しましょう。
ウェルシュ菌の食中毒
ウエルシュ菌は健康なヒトの腸管や土壌、下水等の自然界に広く生息する細菌です。
酸素のないところで増殖する特徴があり、熱に強い芽胞というカプセルの中で菌が生息しています。
カレーやシチューなどを大鍋で作って、残ったからと一晩そのまま室温で放置した場合、食中毒になるケースが多く見られます。
原因の食品は肉、野菜、魚などで、熱に強いので、鍋の中の中心部に酸素がない状態で活発に繁殖します。
ウエルシュ菌食中毒の症状
6~18時間で下痢、腹痛と下痢を引き起こします。
多くは1日程度で良くなります。
ウエルシュ菌食中毒の予防
煮込み料理や鍋料理などを作った際は、あら熱を取ったら冷蔵庫で保管しましょう。
セレウス菌の食中毒
セレウス菌は、河川や土の中など自然界に広くいる細菌で、農畜産物などに生息しています。
野菜・果実、豆腐、ナッツ、乳製品、調味料、穀類などがあげられます。
症状により、「嘔吐型」と「下痢型」に分かれます。
よくあるケースでは、チャーハン、ピラフなどを作って、残ったものをそのまま室温に放置したことにより菌が増殖して、感染します。
また、弁当にごはんを入れた際、冷まさずに熱いまま蓋をすることで、中で菌が繁殖します。
ウェルシュ菌同様、120℃で90分加熱しても死なない芽胞を作ります。
セレウス菌の食中毒の症状
嘔吐型は1~5時間程度で、激しい吐き気・嘔吐などを引き起こします。
下痢型は8~16時間程度を経て発症し、腹痛と下痢を起こします。
セレウス菌の食中毒の予防
芽胞が一度できると、通常の加熱では死滅しませんので、食べられるだけ調理し、残った場合は早めに冷蔵庫に入れるなどの注意が必要です。
お弁当を作るときは素手でおにぎりを握らない。
冷ましてから入れる。
サラダを作るときはプチトマトのヘタは切り取ってから入れる(トマトのヘタに菌が付着しています)
保冷剤などを入れておく。
寄生虫による食中毒もあなどれない|アニサキス症
近年寄生虫による食中毒も増えてきました。
寄生虫による食中毒で代表的なものはアニサキスによるものです。
アニサキスはサバ、サケ、アジ、イカ、イワシ、サンマ、タラ、カツオなどに寄生しており、それを食べた人間の胃や腸に寄生して内臓を食い破ります。
アニサキスの病状についてはブログでもご紹介しています。
アニサキス症の症状
アニサキスが寄生した生魚を食べてから2~10時間後に起きます。
胃に寄生した胃アニサキス症では胃痛、嘔吐などを起こし、腸に寄生した腸アニサキス症では腹痛、嘔吐などを起こし、場合によっては腹膜炎をおこしたりします。
アニサキス症の予防
アニサキスは加熱、冷凍で死滅します。
その他よく噛むことで死滅します。
釣りで生のアジやサバなどを調理する時は、まず内臓を先に取り除きましょう。
酢や塩に漬けるとアニサキスが死ぬということはありません。醤油も同様です。
アニサキスは大きいので肉眼でも見つけられます。
刺身などで食べる時は気をつけましょう。
しめ鯖を食べて夜中に急激な胃の痛み、イカの活け造りを食べてみぞおちの痛みのような経過が典型定期です。
疑わしい時は、胃腸内科や消化器内科を受診しましょう。治療は胃カメラでアニサキスの除去です。
食中毒にならないためのポイント
デリバリーやテイクアウトの食品ではこれからの季節、配達中や家に持って帰る途中、炎天下の中で食品が傷んだりすることがあります。
調理済み食品を持ち帰る途中で、炎天下の車内に放置して食品に菌が繁殖したりするケースもあります。
暑い時期に細菌性食中毒は増えます。
ポイントとしては
- 肉類、魚類は加熱して食べる。
- 卵はできるだけ生を避け加熱するようにする。
- 調理したらできるだけ食べ切り、残った場合はそのまま放置せず、冷蔵庫で保管する。
- テイクアウトした食品は早めに食べ、高温多湿の場所では保管しない。
- 手洗いはもちろんのこと、調理器具は毎回丁寧に洗い、肉や魚を切った包丁やまな板で洗わず、生野菜などを切らない
気温も上昇し、梅雨や湿気が多くなってくる季節です。
十分に気を付けることが必要です。