かっては日本人は胃がん、アメリカ人は大腸がんが多い民族であると言われていた時代があります。
そんな俗説は過去のものとなりつつあります。
飽食の時代、日本でも増え続けている癌があります。
大腸がんです。
早期発見、早期治療にての大腸がん根治が大切です。
しかし、早期発見のためには大腸カメラをうける必要があります。
おしりからカメラを入れる検査、なんだか辛そうで、精神的な敷居が高いのは確かです。
しかもジャバラ状に曲がりくねった、大腸の中をスムーズに一番奥にまで、そして痛くないようにカメラを操作するのには医師の熟練が必要です。
熟練した内視鏡医は、左手でのカメラの上下左右操作、左手での脱気送気操作、右手でのねじりトルクとスコープを前後させる協調操作、全てを同時進行しながら大腸検査を行っています。
大腸カメラは手技的な難易度が高く、術者(検査を行う医師)の技術に依存するところが多い検査いわれるのがその理由です。
だれでも簡単に操作できる(かもしれない)大腸カメラのアメリカでの開発
術者の技術に依存せず、だれでも簡単に操作できる大腸カメラを作れないか と誰もが考えます。
このテーマに真っ向から取り組んだアメリカからの報告を紹介いたします。
結論から言えば、まだまだ未完成ですが、アイデアはおもしろいです。
大腸の走行は人によって千差万別で、場合によっては癒着などのために非常に鋭角を形成していることもあります。
上記のように脱気して大腸内の空気量を調節して、トルクと左右上下動作の協調で、この鋭角を越えていくのが大腸カメラです。
必要は発明の母、いかに大腸カメラスムーズにすすませるか
らせん状のコイルを推進力として大腸カメラを前にすすませるアイデア、アメリカだから出たと感じます。
良い意味でも、逆の意味でもです。 内視鏡に関する医療の進歩の中心は、当然ながら技術の研鑽、医師のスキルアップです。
大腸カメラの挿入方法を解説する医学書が多数あるのもうなずけます。 そして、それを支える道具(大腸カメラ)そのものの発達です。
内視鏡は長いスコープの先端にカメラが付いていますので、スコープの材質が非常に大切です。軟らかいながらもコシ、トルクが伝わるスコープ開発です。
技術研鑽中心の日本的な発想の弱点は、大腸カメラ挿入が特殊技術すぎることです。術者依存度が高いので、大腸カメラを操作できる医師の数に限りがあります。
一人の熟練した医師が育つのに時間もかかります。 アメリカ的な発想で、そんな難しい技術なら、だれでも操作できるレベルに落とし込もう。
今回アメリカからの報告は、もっとも大切な技術の部分を、機械でなんとしようという試みです。
増え続ける大腸がんに対する内視鏡医が相対的に不足しているのかもしれません。
必要は発明の母です。
写真のように、大腸カメラの先端にらせん状の機械をとりつけています。
このらせんを回転させることで推進力として前スコープがすすむのです。
電動スパイラル大腸内視鏡です。
らせん状機械をつかった大腸カメラ完遂率96.7%
このらせん状の機械を付けた大腸カメラを受けた報告が2018年5月に発表されています。
検査を受けた人数30人
回盲部までの全大腸挿入平均時間、7.1分
回盲部までの全大腸挿入完遂率、 96.7%
30人の検査を、この機械を使って行い、29人が奥まで観察することができた結果です。
大腸検査技術を言葉で表すのは難しいのですが、カメラを一番奥まで挿入して全大腸を観察する、大腸カメラ検査完遂率は一つの指標となります。
まずまずの結果といえると思います。
中島クリニック大腸カメラ、完遂率99.1~100%
2016年、2017年は600~700例の大腸検査を行っておりますが、全例大腸の奥まで検査できております。
婦人科術後、癒着症例、等々過去に大腸カメラ困難であった方も含まれた中での100%の完遂率です。
大腸カメラを奥まで挿入する時間は平均で4分でした。
当院では、アメリカから報告のようならせん状の補助器具に頼る必要は全くないのが現状です。
とは言え、日本でも増え続けている大腸がん撲滅にむけて内視鏡医の数は足りていない現状を考えると、挿入難易度をさげる、らせん状補助器具の安全性確立、普及に期待する気持ちあります。
まとめ
大腸がん早期発見、早期治療のためには大腸カメラによる精密検査が重要です。
大腸カメラは操作が複雑で医師の熟練が必要な検査ですが、操作難易度を下げるらせん状の補助器具開発の報告がアメリカからありました。
現段階では研究段階ですが、安全性が確立され普及するかどうか今後に期待するところです。